為替介入でトレンドは変わるのか?

日本では、円高が進むと日銀による為替介入(外国為替平衡操作)が行われることがあります。
ニュース等で見聞きした人も多いのではないでしょうか。

FXを何年もやっていると、つい為替介入に乗じて一儲けできるのではないか?と考えがちですが、実際はそうは上手くいきません。

何故なら、為替介入は、日本だけでなく、他の国も行っていますが、度を過ぎると、ルール違反として、国際社会から批判されるもとになりますし、必ずしも効果があるとは限らないからです。

為替介入とは?

為替介入(外国為替平衡操作)とは、簡単に言うと、大量の資金による買い(あるいは売り)注文により、為替レートを操作する目的で行われる文字通り、外国為替市場への介入行為のことです。

日本やスイスなど一国の中央銀行によるものが一般的ですが、複数の国家による協調介入や、ヘッジファンドなどの大手投機筋が日々頻繁に仕掛けているとされるストップロスハンティングも、言ってしまえば介入の一種と言えます。

外国為替市場にトレンドが生まれる仕組み

為替レートの変動には国益も絡んでいるため、一国の中央銀行が自国通貨のレートを操作するために行う為替介入は本来はルール違反と言える行為で度が過ぎると他国から批判されるだけでなく、米国や国連による経済制裁の対象にもなりえる行為です。

なので通常、為替介入は覆面で行うもので、誰がいつどのタイミングで介入を行ったかは明らかにはされない場合が多いですが、投機筋に対するけん制の意味を込めて行う介入の場合、介入を行った当事者がアナウンスすることもあります。

例えば、リーマンショック以来円高が進み、ドル円のレートが80円を割りこみ、過去最低水準が続いていた2011年に、日銀は2度の大掛かりな為替介入を行っています。

2011年10月31日:8兆722円のドル買い円売り介入。
2011年11月1日から11月4日:1兆195億円のドル買い円売り介入。

この急激な円高が進んだ背景を日本政府は「投機的な行き過ぎた行為」として批判。
歪んだ為替レートを修正するためとして、自らの為替介入の正当性を主張するとともに、投機筋に対するけん制として、為替介入を行ったことを後日公式の場で発表しています。

為替介入の効果

上記の2度の為替介入の結果として、ドル円のレートは以下のようになりました。

上記の画像はドル円の月足チャートで、赤い線を引いた時点が日銀による介入が行われた月です。

介入により、円高トレンドが反転したともとれますが、介入後3ヵ月間は、依然としてドル円は下落し続け、ドル円が上昇に転ずるまでの間にかなりの時間を要していますので、果たして介入による効果があったのかどうかと言えば、微妙と言わざるを得ません。

というのも、実は為替介入は為替レートを操作する目的においては、過去あまり成功例は見られません。

そのため、為替介入による効果は短期的な変動にたいするけん制がせいぜいであり、中長期的な効果は得られない、とする見方がほとんどで、実際、米国は「巨大な為替市場を相手に相場の操作を試みるのは無駄」との考えから、2000年以降、一切為替介入を行っていません。

また2009年のギリシャ危機以来、ユーロ安の流れが続いていた欧州では、スイスが自国通貨安を保つためユーロ買い・フラン売りによる為替介入を何度も行っていました。しかし、欧州の量的緩和政策などにより、ついにはユーロ安・スイスフラン高の流れを食い止めることができないと判断、それまで数年にわたって続けてきた対ユーロへの無制限介入政策を2015年1月15日に突如撤廃、それによりスイスフランショックというパニック騒動が引きおこっています。

上記の例からも、例え1つ(あるいは複数)の国が数兆円規模の資金をもって為替レートの操作を目論んだとしても、巨大な為替市場のトレンドを変えうるほどの効果はないことが窺えます。

しかし、日本の場合、あの時点で日銀が介入を行っていなければ、ヘッジファンド等の投機筋による追撃売りがなかったとも限りませんし、その場合、ドル円はさらなる一段安になっていた可能性もあります(過去ヘッジファンドによる浴びせ売りで、英国ポンドが通貨危機に陥った過去もあります)。
そう考えると、多少は効果があった、とも言えるかもしれません。

ちなみに、投機筋に対するけん制が目的なら「介入するぞするぞ」と見せかけて実際はしないという手もありますが(口先介入と呼びます)、口先であることが投機筋に読まれてしまうと全く意味がないため、実際はある程度の資金を投入し、短期的でもレートを操作して見せる必要があります。

何故、日本は為替介入を行うのか

ちなみに、何故、日本が過去頻繁に為替介入を行ってきたかと言えば、行き過ぎた為替相場を修正するため、などと言ってはいますが、その実は言うまでもなく対ドルに対して円安を保ちたいがためです。

日本は家電製品や自動車などを海外(特に北米)に売って、外貨を得ている国ですから、円高になると売り上げが減って困ってしまいます。
日本だけでなく、一般に自国通貨安のほうが、国内の景気をよくする効果も高いため、不景気で悩んでいる国の多くは自国通貨安政策をとるのが普通です。

先ほどのスイスの例の他、ロシアも対ドルでのルーブルの上昇を抑制するためのいわゆる「自国通貨安のための為替介入」を2009年に行っています。
しかし、一方で2008年のアイスランドのクローネ買い・ユーロ売り、ウクライナのグリブナ買い、また近年のブラジル(レアル)等の新興国による自国通貨買い・ドル売りといった「自国通貨の価値を高める=国家破綻をさける」ための為替介入も存在します。

実際、介入を行っても為替レートはあまり変動しませんが、日経平均株価はほぼ確実に上がりますから、介入による景気刺激を多くの投資家が好感していることは間違いありません。

ただし、何度も言うように、介入が景気刺激に効果があるからと言って、過度に行うと国際的な非難は免れませんし、為替操作国として米国から見なされれば、なんらかの経済制裁を受ける可能性もあります。

為替介入のタイミングを見計らってトレードすれば勝てる?

というわけで、前置きが長くなりましたが、本題に入りますが、では、為替介入に合わせてトレードすることで一儲けすることは可能かと言えば、正直微妙としか言えません。

2011年のドル円80円割れの時は明らかに行き過ぎた感はありましたし、ドル円相場は正直ファンダメンタルズを反映しているとは言えませんでした。
だから、日本政府による介入とその後のアナウンスには一定の効果があったとも言えます。

しかし、当時既に筆者はFXをやっていましたが、その時点において、その介入により円高の進行が止まると予想していた人はほとんどいませんでいした。

ドル円は60円台へとか下手すると30円台へ、なんて論調もあったくらいです。

要するに介入が上手くいったかどうかなんて結果論にしかすぎないわけです。

2011年の為替介入は明らかにドル円相場がオーバーシュートしていて円が買われ過ぎていました。
ファンダメンタルズを無視していたと言っても過言ではないと思います。

しかし、にも拘わらず介入によって円高トレンドが止まるかどうかは当時の誰にも分らなかったのです(もしわかっていたら皆が全力でドル買いしていたでしょう笑)。

ちなみに2011年で円高ドル売りトレンドが終結したのは、日本の為替介入の結果ではなく、各国(特に米国)の金融政策の結果によるもの、というのが現在での常識です。

そう考えると、仮に未来において、どこかの国が為替介入を行ったとアナウンスしたとして、その流れに乗じて一儲けすることは可能かと言えば、限りなく不可能だと思います。

ただし、介入が行われる状況というのはある意味非常時なので、アナウンスされた時にどちらかに山を張ってギャンブルトレードすることは可能でしょう。

オーバーシュート時には短期的には為替介入によってトレンドが一休みする可能性は高いので、まだまだトレンドが継続すると判断している場合は、絶好の押し目買い(戻り売り)のチャンスでしょうし、トレンドが反転すると判断すれば、その読みが当たれば、数ヵ月後には美味しい思いができているかもしれません。

ただし、オーバーシュート時ではない場合。
新興国の通貨などが売られ過ぎていても、それが行き過ぎではなく、単にファンダメンタルズを反映しているだけの場合。

為替介入が行われても、何の効果もないばかりかかえってその国の通貨売りが加速する場合すらあるので要注意です。

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