戦争やテロが為替相場に与える影響を検証
一般的に戦争やテロが起こると、為替相場に影響を与えます。
ただし、どの国の通貨が売られ、どの国の通貨が買われやすくなるかは、どこで戦争やテロが起こったかによって違います。
これは地政学リスクと呼ばれるものが関係しているのですが、実際にはその裏側にはもっといろいろば複雑な要因が潜んでいるようです。
湾岸戦争とイラク戦争の場合
アメリカが他国に戦争を仕掛けた場合、株式や為替にはどのような影響があるのか。
過去の例にもとに分析してみましょう。
一般にその国が戦争を始めると株価が暴落し、その国の通貨が売られる、とされています。
が、実際にはより複雑な要因が絡み合っていることが過去の例から見て取れます。
例えば、1991年に起きた湾岸戦争の時には、ドル円は5%ほど下落しました。
が、その後はそれほどドル売りに反応しませんでした。
寧ろ、戦争終了間際にはドルは大きく買われ、開戦前よりもドル円は上昇しています。
これは湾岸戦争がアメリカ単独での戦争ではなく、国連多国籍軍vsイラク、だったからであり、世論的には多国籍軍側に正義があったためとも言われていますが、では、2003年3月20日に勃発したイラク戦争の時はどうだったか。
この時は国連安保理決議を半ば無視してアメリカ・イギリス連合軍がイラクに侵攻した形になっています。
この時は開戦直後は、「織り込み済み」「想定内」として為替市場はあまり反応しませんでしたが、徐々にドルは売られ始め、最終的には、ドル円は114円レベルから103.50円レベルまで値を下げることになります(下図はドル円月足チャート。赤線は2003年3月のもの」。
これは先の湾岸戦争とは違い、アメリカの唱える正義に対して反感を覚える人が多かったことが影響しているとされています。
しかも、その後の調査でアメリカがイラク侵攻の理由としていた「大量破壊兵器の存在」が実際には事実無根であったことから、この後、アメリカは世界からの信頼を大きく失うことになります。
この時に失った信頼が、その後のサブプライムローン危機やリーマンショックなどにも大きく影響を与えることになります。
ちなみに、湾岸戦争時もイラク戦争時も米国の株価は堅調でした。
これはアメリカでは軍需産業が盛んであり「戦争=儲かる」という図式が存在するからと言われています。
アメリカ同時多発テロの場合
続いて2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロの場合を見ていきます。
イラク戦争のきっかけとなったこの事件ですが、このテロが起こった時、アメリカ国内は騒然となり、NYダウは700ドル以上も値を下げ、1時は取引が停止される事態にまで発展しました。
為替相場においても同様で、テロ発生の知らせを受けて、大きくドルは売られ、いわゆる「有事の円買い」が起こったようです。
が、ドルが売られたのは本当に最初のうちだけで、その後は力強く、ドルは買われ、ドル円はテロ発生前と比べ10円近くも上昇することになります。
これはテロにより、アメリカ国民の愛国心が強く刺激され、アメリカの投資家たちが、ドル売りを行わなかったから、と言われています。
その後のドルの上昇も、まるで世界がアメリカを応援する力が乗り移ったかのようでしたが、それもアメリカがイラク戦争を始めるまで。
その後は、前述したようにアメリカドルへの信頼は失墜してしまうのですが(笑)。
以上から見るに、少なくともアメリカ合衆国の場合は
- 他国で戦争をするとドルはそれほど影響を受けず、株価は堅調に推移
- 自国でテロ等で被害が及ぶと1時的にはドルも株も売られるも結局はどちらも上昇へ
という結果に繋がっているようです。
通常、自国で戦争リスクやテロなどの地政学リスクが高まると、その国の通貨も株価も下落する、と前述しました。
テロなどが起きれば、観光客は確実に減り、企業の営業活動も制限されるため、そうなるのが普通なのですが、経済大国にして軍事国家でもあるアメリカ合衆国の場合は、そうはならなかったようです。
寧ろ
戦争がおこれば軍需産業が儲かる→NYダウが上昇→ドルもつられて上昇しがち
となっていることがよくわかります。
北朝鮮のミサイル発射問題について
北朝鮮はこれまでも何度か核実験および大陸弾道ミサイルの発射実験を行っているとされていますが、2017年も、北朝鮮は何度か大陸弾道核ミサイルの発射実験を行っているようです。
FX口座を持っている人は、北朝鮮がミサイルを発射するたびに、その都度FX業者から「リスク管理の徹底」に関する注意喚起を受けているのではないでしょうか(筆者はよくメールが送られてきます)。
しかし、実際は、北朝鮮のミサイル発射によって、円が大きく売られたり、日経平均株価が暴落したりはしたことはあまりない様子です。
2月13日
始値19513.78、終値19459.15、前日比+80.22
3月6日
始値19409.18、終値19379.14、前日比-90.03
4月5日
始値18900.7、終値:18861.27、前日比+50.02
4月16日
始値18239.84、終値:18355.26、前日比 +19.63
上記を見るに、為替も株も、まるで市場は無反応であることが窺えます。
ミサイル発射で騒いでいるのは、大衆をあおって視聴率を上げようとしているマスコミと、マスコミに乗せられた一部の人たちだけで、投資家の皆さんは冷静に物事を捉えているようですね。
何故、世界から戦争がなくならないのか?
ここで唐突ですが、世界から戦争がなくならないのは何故か。理由がわかりますか?
ここまでの話を読んでくれた方なら、もうある程度察しはついているのではないでしょうか。
そうです。戦争というのはいろんな人が儲かるからです。
勿論、これは、自国以外の場所で戦争が起こった場合のみですが(笑)。
以前、自動車が売れれば日本の景気は良くなるが、スマホアプリが売れても日本の景気はあまり良くならないことについて述べました。
戦車や戦闘機、戦闘ヘリ、ミサイル、空母……。
これらを作るのには、自動車以上に多くの人がかかわっています。
だから戦争のための兵器をたくさん作れば、軍需産業のトップ層だけでなく、その末端の企業で働いている人たちも少なからず恩恵を受けることになります。
何故、アメリカ合衆国は戦争ばかりしているのか。
何故、北朝鮮はミサイルを開発しようとしているのか。
そこには景気をよくして一儲けしようという思惑が見え隠れしているように感じます。
ちなみに2016年度のアメリカ合衆国の軍事費は約6000億ドル(日本円にして60兆円)、GDPの約3%を占めています(日本は1%、中国は2%)。
そのアメリカが一切戦争しなくなったらどうなるか。
まず単純計算でGDPは3%減です。
そればかりか、ミサイルや戦車や戦闘機を作られなくなるので、これまで軍需産業に関わってきた多くの企業が倒産、あるいはリストラの嵐で人員を大幅に削除することになります。
加えて100万人以上いる兵隊さんたちの多くも失業することになります。
一体どれだけ失業率がアップするのか計算できないほどです。
世界経済に与える悪影響も想像を絶するものになるに違いありません。
ちなみに、これはアメリカ合衆国だけでなく、世界軍事力2位の中国などにも同じことが言えます。
そう考えると、戦争をなくすには、勧善懲悪の精神ではなく、世界経済の仕組みやあり方そのものを変える必要があるわけですが、そういった変革は急激には起こせません。
それに世界の支配者層である超お金持ちの人たちが、そういった変革を許すとも思えません。
ちなみに、為替相場や株式相場のメインプレーヤーは投資ファンドなど。言うまでもなく、世界の支配者層である超お金持ちたちの手先と言っても過言ではありません(笑)。
とすれば、世界の裕福層の人たちが何を考え、どう行動するのか。
それが想像できない限り、戦争と為替や株式相場の値動きの関係性について、本当の意味で理解したことにはならないと言えるのかもしれません。
まとめ
一般に、その国の経済に被害が及ぶことが予測されるようなテロや戦争行為等が起こった場合、地政学リスクにより、その国の通貨は売られ、株価も下落しやすくなります。
ただし、そのテロや戦争が、イラク戦争のように前もって想定されていた場合、「織り込み済み」として逆の反応がおこる場合があります。
テロや戦争による経済被害よりも、戦争特需のほうが上回っていると判断される場合も、株価は上昇し、それにつられて通貨高になる場合があります。
戦争特需を優先しすぎて、世界中からバッシングを受けるような行動をとった場合、その国の通貨は売られ安くなります。
株もFXもメインプレーヤーは世界の支配者層と呼ばれる超裕福層なので、どう相場が反応するかは最終的には彼らの意向次第と言えます。
まとめるとこんな感じでしょうか。