インフレ・デフレ・スタグフレーションとは?政策金利との関係

為替取引における経済指標の中でも最重要なのが、各国の金融政策の動向に関するものです。
特に政策金利の引き上げ(引き下げ)は、その国が置かれている状況(インフレやデフレ)を如実に反映することになるので、噂が噂を呼び、時にその国の通貨価値の大変動をもたらします。

何故、政策金利が上がるとその国の通貨が買われるのか

政策金利が引き上げられると、多くの場合、その国の通貨は為替相場で買われやすくなる傾向にあります(逆も然り)。

理由の一つはスワップ金利。
政策金利とスワップ金利の関係でも述べましたが、FXで得られる利益の一種であるスワップ金利は、二つの国の政策金利の差によって決定されます。

そのため、スワップ金利目的で為替取引を行っているトレーダーは、単純に高金利通貨と円の組み合わせでのロングポジションを持ちたがる傾向にあります。
例えば、2017年5月現在、トルコと日本の政策金利の差は実に8%もあり、この場合、1年間トルコリラ円を保有していれば、それだけで年利8%程度のスワップ金利が得られることになります。

政策金利とインフレ・デフレとの関係

一般的に政策金利とその国の景気には大きな関連性があります。

基本的に景気が良いとは、物が買われやすく、企業が利益を上げやすい状態のことです。
企業の売り上げがアップすれば、サラリーマンの給料も上がり、当然、各家庭の財布のひもも緩くなりがちなので、モノやサービスを購入しやすくなります。

多くの人が特定の人気商品を購入しようとすると、売り切れなども続出することもあるでしょう。
その場合、商品価格が天井知らずで上がることもあります。
そうするとますます企業は利益が上がり……。

インフレとは?

この「好景気→物価上昇→企業売上アップ→ますます好景気→……」という流れをインフレ(インフレーション)スパイラルと言い、国の景気が良くなる過程で起こる現象です。
が、良いことばかりのように思えて実はインフレはメリットだけでなくデメリットもあります。

それは行き過ぎたインフレはバブルやハイパーインフレに繋がるということです(ハイパーインフレに関しては後述)。
1990年代、日本は空前のバブルに見舞われ、不動産投資や株式投資が活発化しましたが、行き過ぎた投資に歯止めがきかなくなり、物の価格は常識の範疇を超えて狂ったかのように上昇、しかし、その後、バブルは崩壊しました。
バブル崩壊後の日本に大不況時代が訪れたことは歴史の教科書にも載っていますから、多くの人がご存じでしょう。

日本ほどでなくても、そういった事例は数多く存在するわけで、だから、好景気だからと言って喜んでばかりはいられないわけですね。

そのため、各国の中央銀行は、バブルやハイパーインフレを起こさないため、インフレ率(物価上昇率)を一定の範囲内(2%程度)に収めるよう、常に監視し、政策を打ち出します。
この「インフレを抑えるための金融政策」の代表的なものが、政策金利を上げること。

一般に企業は銀行からお金を借りて事業を行っているので、金利を上げることで、企業の活動レベルは若干低下します。
また、個人もローンを組みにくくなったりして、不動産や車のローンなど、お金を借りてまで物を購入しようとは思わなくなります。

金利が高ければ、利息も多くもらえるので、お金はできるだけ使わずに銀行に貯金しておこう、という人が増えることになるわけです。

まとめると一般的に、好景気になると金利が高くなる=景気のいい国は金利が高いとなりますが、金利が高いからと言って好景気であるとは限りません。

インフレが起こると株価も上昇する

(適度な)インフレが起こっている景気のいい国は企業の売り上げが順調に伸びている状態ですから、当然、株価も上昇基調に入っていることが多いです。

例えば、日経平均株価が連日の高値更新!みたいなニュースを見ると、株式投資を始める素人投資家が増えますが、これは国内だけでなく、海外の投資家も日本の株を購入したいと考えるようになります。

日本の株を買うには円が必要ですから、アメリカ人投資家が日本の株を購入する場合、ドルを円に換える(つまりドル売り円買い)を行う必要があります。

  • 景気が良い
  • 金利が上昇
  • 株価が上昇
  • その国の通貨高になる

これらは基本的に同時に起こる、とされています。

ただし、上記の4つが連動することは、あまりありません。
この辺りが経済の複雑なところと言えます。

例えば、日本の場合、株価上昇と円高は相反する関係にありますし、景気も悪く金利もずっと低いままなのに、株価だけが上昇することもあります。

上記の4つは同時に起こりやすい、というのが基本的な見方ですが、それゆえに政府の政策等に利用され、歪められることも多いのです。

近年の、日本の場合だと、アベノミクスと呼ばれるものなどがそれに当たります。

  1. 政府が景気回復を大々的にアピール(嘘?)
  2. 実際には景気は回復していないのに株価上昇

こういったことは、日本だけでなく、世界中のいろんな国で起っています。

デフレ・デフレスパイラルとは?

先ほど、物価が上昇すれば、企業の売り上げがアップ、と言いました。

  1. 企業の売上アップ
  2. 給料アップ
  3. どんどんお金を使う人が増える
  4. 物が不足(売り切れ)がちになる
  5. 物価上昇(1へ戻る)

これは先ほど述べたインフレ・スパイラルになります。
お金持ちは、少々物価が上昇しても購入を控えませんから起こる現象です。

その反対に下のような経済状態に陥ることがあります。

  1. 企業の売り上げダウン
  2. 給料ダウン
  3. お金を使う人が減る
  4. 物があまりがちになる
  5. 物があまると必然的に企業は価格を下げざるを得ない
  6. 物価が下落する(1へ戻る)

こういうのをデフレ・スパイラルと呼び、景気が悪化する過程で発生するモノの値段が下がり続ける現象を指します。
デフレ・スパイラルから抜け出す方法は、先ほどのインフレの逆で金利を下げること。

金利を下げることで企業や個人がお金を借り易くなる土壌を作り、お金の流通量を上げるのが目的ですが、金利を下げると通貨安を招く効果もあるため、輸入企業が経済の中心となっているような日本のような国では二重の意味で効果があることになります(自国の通貨価値が下がると、海外でものが売れ、景気が良くなる方向へ向かうため)。

一般に、日本のようにデフレから抜け出したい国は低金利政策をとり、インフレを抑えたい国は、高金利政策をとっていることが多いです。

高金利国家は景気が良いの?

一般に好景気になると物価上昇(インフレ)が起こります。
しかし、インフレが起こっているからと言って好景気であるとは限りません。

この辺りが経済のややこしい所ですね(笑)。

好景気→物が売れる→物価上昇

ではなく、単に自国の通貨の価値が下がってしまっているがために、外国からの輸入品が一般人には手が出せないくらい高額になり、それがインフレにつながるケースも多々あります(その輸入品が食料など日常必需品だった場合、その国は貧困にあえぐことになります)。

高金利通貨で有名な国などは、そのほとんどがこのケースに相当します。

  1. 自国の通貨安が原因で他国から物(特に生活必需品)が買えない人が多い
  2. 政策金利を上げて自国の通貨価値を上げて輸入品をもっと安く買えるようにしたい

というわけです。

金利を高く設定すれば、その国の通貨を持ちたいと考える海外投資家を呼び込み、通貨高へと繋げることが可能です。

しかし、通貨高は、特に輸出産業の妨げになり、高金利は企業活動や個人消費を抑えてしまうことにつながります。

景気が良くて、それが原因で(適度に)インフレ率が高まり、結果、高金利にするのなら全く問題はありません。
正しい金利の上げ方、と言えます。

しかし、景気は良くないが、通貨安が原因でインフレが起こっているような場合、金利を高くして企業活動や個人消費を抑えてしまうと、景気がさらに悪くなってしまい、最悪の場合、スタグフレーション(stagnation(不況)と inflation(インフレーション)を足した言葉)を引き起こします。

不況下に起こるインフレのことをスタグフレーションと呼び、給料が上がらないのに、物が不足&物価は上昇となるため、最悪の経済状況とも言われています。

高金利国家のジレンマ

  • 高金利を維持することで、外貨を呼び込み、自国通貨高&インフレ解消
  • 高金利により企業活動や個人消費を抑えることになり景気が悪くなる可能性も

プラス要因とマイナス要因、二つを比較して、どちらの影響がより大きいのかをよく見極め、政策金利を決める。

一歩間違えば、最悪の経済状態(スタグフレーション)になってしまうわけですから、本来は慎重に政策金利を決めなければならないのですが、実際は何もしなければ、インフレが進み、ハイパーインフレに繋がってしまうため、どちらの優先度が高いかと言えば、インフレを止めることのほうが先と言えます。

なので、自国の通貨安と不景気、両方で苦しんでいる国は大抵の場合、金利を上げることでまずインフレを抑えようとするのが一般的です。

しかし、金利を上げてもなかなか通貨安が解消されず、インフレが収まらなかった時どうなるかというと、言うまでもなく、とんでもないことになります。

実際、不景気がであるにもかかわらず、自国の通貨価値を支えるために政策金利を高めにしていたアルゼンチンは、スタグフレーションに陥り、2001年、事実上のデフォルト(債務不履行)となりました。

現在、高金利通貨と言えば、トルコリラや南アフリカランドなどですが、実際、この両国も景気が良いから金利を上昇させているのではなく、アルゼンチン同様、インフレ抑制を最優先事項としてとらえ、政策金利を上げているだけです。

要するにインフレを抑えるための苦肉の策として高金利政策をとっているわけで、そこにトルコや南アフリカ両国のジレンマが垣間見ることができます。

不景気化で高金利政策をとるということはさまに諸刃の剣。

下手をすれば、トルコや南アフリカも、いずれアルゼンチンのようにスタグフレーションに陥る可能性がないとは言い切れません。

おまけ:政策金利に関する経済指標

というわけで、各国中央銀行が発表する政策金利には、世界中の投資家が注目することになります。
金融政策での失策は、時に国家の破綻に繋がるわけですから、当然ですね。

各国政策金利発表は、ほぼ毎月のように発表されますが、基本的に不定期なので、ある日突然引き上げや引き下げが発表されることもあり得ます

米FOMC:年8回
ECB(欧州中央銀行):ほぼ毎月
BOE(イングランド銀行):毎月

特に米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が開催するFOMCは日本時間の深夜(夏時間:午前3時15分、冬時間:午前4時15分)に発表され、しかも時に雇用統計なみに、相場が大きく動くので要注意。
そのため、FORM政策金利発表がある時は、ポジションは必ず閉じておくようにしたほうが無難です。

また、先ほど、アベノミクスを例に述べましたが、基本的に政府は、景気の悪化=支持率低下、となるため、政策金利に関する要人発言では嘘とは言わないまでも、それに近いグレーな発言が多く、またそれが許されてきた歴史が存在します。

まだまだ利上げは行わないよ、と言っておいて、突然利上げする。
そうすることでサプライズを引き起こそう、という思惑が隠れていたりするので、要人発言を鵜呑みにするのだけはやめましょう。

相場(投資家)というのは何よりもサプライズに弱いという特徴があります。
政策金利発表の際もこれは同様で、政策金利の引き上げが発表されても、それがサプライズでなければ「織り込み済み」として全く相場が動かない時も多々あります。

ちなみに豆知識として、欧州は世界大戦後など、過去にハイパーインフレ(操作不可能なレベルのインフレ。数年前、ジンバブエで起こった現象)を何度も経験したこともあって、インフレに対する警戒心が他国よりも非常に強く、そのため、余程のことがない限り、政策金利の引き下げは行わない、という傾向があるので、その点も考慮に入れておきましょう。

インフレを表す経済指標の重要性

政策金利とインフレに大きな関連性があるということは、インフレ指標と言われる2つの指標に注意を払うことで、各国の金融政策の行方を読み取ることができるということでもあります。

  • 消費者物価指数(CPI:Consumer Price Indexの略)
  • 生産者物価指数(PPI:Producer Price Indexの略)

前者は消費者(物を買う人)の立場から見た物価の変動模様を指数にしたもので、後者は生産者(物を作る人)の側から見た指標です。

特に価格変動率の高いエネルギー、食品、たばこ、アルコールなどの除いたコア指数のほうがより重要で、この指標に発表値と予想値とのズレが大きい場合、為替レートも大きく変動することになります。

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