FXの負けパターン「損切り貧乏」と「損切りできない病」
FXを始めて、誰もが最初に思うのは損切り(ロスカット)と利益確定のタイミングの難しさ。
人間には「10万円の利益を得た時の喜び」よりも「10万円の損失を出した時の悔しさ」のほうが大きいという心理があるそうです。それが、利小損大トレードと呼ばれる負けパターンに陥りやすい傾向に繋がっているわけですね。
何故、利小損大トレードになってしまうのか
利小損大トレードとは、勝つときは少額、負ける時は大金を一気に失うような下手くそトレードの典型です。
そのため、FXの入門書等を読むと、必ずと言っていいほど「損切りを早めにして、損小利大を目指しましょう」と書かれてあります。
が、この損小利大トレード、言葉で言うほど簡単ではありません(簡単にできれば誰でもFXで勝てます)。
FXを始めると、大体の人が以下のような思考パターンに一度は陥るものです。
- ドル円100円で1万ドル購入。首尾よくドル円100,50まで上昇。「もっと上がるはず!」と思っていたら、その後100円まで戻す。「あの時利益確定していれば5000円の利益だったのに!くそ!」
- ドル円100円で1万ドル購入。が、すぐにドル円99,50まで下落「うわ。あっという間に5000円の損失。やばい、早く損切りしないとどんどん損失が膨らんでしまう」とビビッて慌てて損切りするも、その後、ドル円、再び100円に戻す。「くそ!損切りしなければよかった!5000円損した!」
FX相場は、そのほとんどがレンジ相場のため、上記のようなことがよく起こります。
で、結果、10戦全敗。その内、5回は、利益の出ていたはずのトレードでした。
こういうのを損切り貧乏と言って、FXを始めたばかりの初心者によくあるパターンです。
次に初心者が進むのは、次のパターンです。
- ドル円100円で購入、首尾よくドル円100,50まで上昇。「戻らないうちに早くリカク(利益確定)しなければ!」で即利食い
- ドル円100円で購入、が、ドル円99,50まで下落「我慢だ我慢。その内、もとに戻るさ!」で損切りしない(できない)。
結果、全戦全勝。その内、半分程度は損失の出ていたはずのトレードでした。
が、損切りするのを我慢したおかげで、損失0にすることができました。
そして、その全戦全勝が、運よく(あるいは運悪く)1か月ほど続くと…。
そのころには、もうあなたは間違いなく天狗状態です(笑)。
月十万以上稼げるようになり「俺って天才じゃね? 含み損を我慢するのが精神的にしんどいけど、それに耐えればいいだけだし」みたいな心理状況になってしまいます(これを損切りできない病と言います)。
しかし天才でもなんでもなく
- FXは7割がレンジ
- 損切りしない
この2つの条件が合わされば、誰でも連戦連勝をすることは、そんなに難しいことではありません。
が、怖いも知らずのFX初心者は、図に乗ることをやめません。
「よし、来月からはレバレッジを10倍にしよう!そうすれば毎月の利益も10倍だ!」
そして…。
いつもようにドル円を購入(あるいは売り)。
今回からは、レバレッジを10倍にして、利益も10倍を目指します。
ところが、購入したドル円ロング(100円と仮定)ですが、予想とは反対に動いてしまい、現在50pipsのマイナス。
「はは。いつものことさ。どうせ、すぐまた100円に戻るさ(汗)」
しかし、ドル円はさらに下げ続け、ついに100pipsのマイナスに。
レバレッジを高めに設定しているせいで、含み損はいつもとはケタが違います。
「だいじょうぶ。ダイジョブだ…。だいじょうぶだよね…」
焦るあなたは、含み損の額に冷や汗をかきつつ、こう思います。
早くもとの値段に戻ってくれ。そしてこの恐怖と苦痛から解放されたい…。
そして、禁断の秘術に手を付けます。
その秘術の名は「ナンピン」です。
ナンピンとは?
例えば100円で購入したドルが95円まで下がったとします。含み損は5円分で、経験したことのある人は理解できると思いますが、含み損が発生している時というのは、精神的に非常に苦しいです。
安らかに眠ることもできないくらいです(笑)。
だから、できるだけ早くその苦しみから解放されたい、と思うのですが、ドル円は1日に1円動く程度。どんなにうまくいっても5日。つまり一週間程度、含み損の苦しみに耐えつづける必要があります。
しかし、ここまで下がるまでの間にもうかなり苦しんできたので、精神的にはもう限界で「今後もっと下がるかもしれない」という恐怖に、あと一週間も向き合うことなど到底出来そうもありません。
が、もし、95円で、100円で購入したのと同額(10枚)を購入したとしたら、購入平均金額は97,5円。
あと2,5円、円安に振れてくれれば含み損が解消されることになります。
ナンピンとは、このように購入(売却)平均コストを下げる目的で、含み損に耐えられなくなったFX初心者がよくとりがちな手法で、計画的に行うのなら決して悪いやり方ではないのですが、こういう苦し紛れのナンピンはうまくいかないことが多いです。
FXはたった一回の負けで全てを失う
結果、ナンピンしたにも関わらず、ドル円はさらに下降を続け、90円になったとします。
レバレッジ10倍(10万通貨での取引)なら100万円の損失です。しかも95円でも10枚ナンピンしているため計150万円の損失。
先月稼いだ額の十倍以上の損失になってしまいました…。
と、いった具合に、損切りしない、という戦略は、7割程度はうまくいくものの、3割はうまくいきません。
しかも為替相場は、トレンドが発生し、動く時は大きく動くという特性があるため、損益で言うと、9勝1敗でも損失が出る場合が多いです。
これは逆に言えば、うまくトレンドを読み、大きな波に乗ることができれば、1勝9敗でも利益が出ることの裏返しでもあります。
FXの入門書には必ず「損小利大を目指しましょう」と書かれていると前述しましたが、こういった理由があるわけですね。
ただ、これも前述しましたが、損小利大を目指すだけでFXで勝ちつづけることはできません。
大きなリターンを目指すなら、必ずどこかでリスクを冒す必要があるからです。
リスクの見極め、つまりリスクコントロールができない限り、FXで勝ち組になることはまずできません。
FXで勝ち続けることの難しさと損失が膨らむことの怖さ。少しは理解してもらえたでしょうか(笑)。