FOMC議事録の見方と為替相場への影響
FOMC議事録とは、FOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)での金融政策の決定を受けて、その3週間後に発表される議事録です。
FOMC政策金利同様、日本時間の深夜(夏時間午前3時、冬時間午前4時)に発表され、しかも場合によっては政策金利発表よりも相場が荒れることになるという、日本人FXトレーダー泣かせの経済指標と言えます。
ちなみに議事録とは会議などで話し合われた内容や決定に至るまでの経過をまとめたものことです。
FOMCとは?
米国の中央銀行にあたるFRB(The Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)による金融政策の最高意思決定機関で、日本でいうところの日銀とよく似た機関と言えます。
米国の現在の景況を見極め、有効な金融政策を決定するために、FRB理事7名に加え、全米中から集められた金融エリート5名、計12名によって構成されます。
主な仕事は米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利を、米国の経済状況に合わせて誘導することですが、政策金利の変更は国債や為替相場に大きな影響を及ぼし、下手すれば、国を破たんに導きかねない責任重大な仕事です。
そのため、慎重に慎重を重ねた論議が繰り返し行われ、政策金利が変更されるにしても、その理由がいかなるものか、どういった過程でそのような結論に至ったのか、などを議事録として残す慣例になっています。
FOMC議事録の基本的な見方
FORM議事録にしろ政策金利発表にしろ、多くの人が最も注目しているのは金利の引き上げ(あるいは引き下げ)について、です。
要するに政策金利が実際に変更されるのか否かです。
そして次に注目を集めるのは政策金利の変更あるいは据え置きがどのような話し合いや過程のもとに行われたか、です。
多くの投資家はFOMC議事録を読むことで、今後の相場の動きを予測するための材料を得ようと、血眼になります。
例えば、政策金利が据え置きになった場合。
その結論に至った理由や話し合いの過程により、次のように読み取ることができます。
- 金利引き上げすべきだと思うが、今回は見送ったよ
- 金利引き上げに反対する議員が過半数を超えてたよ
勿論、こんな砕けた口調でFOMCのメンバーは話しませんが(笑)、わかいやすく言うと、上記のような発言を、FOMCの中心的な人物がしたとします。
前者なら次のFOMCで利上げするよと言っているようなものですから、当然、ドルは買われやすくなります。
また、後者なら、逆に次回のFOMCでも利上げの可能性がないことを示唆したのと同義ですから、ドルは売られやすくなります。
あるいは、政策金利とインフレに関するコメントは表裏一体ですから、次のようなコメントでも、以下のように読み取れます。
- 多くの参加者がインフレが拡大しつつあると認識している=インフレ怖いからすぐにでも金利引き上げが必要かもよ
- インフレ見通しが不確実になった=よくわかんないから取りあえず様子見に徹するよ(金利据え置き示唆)
- ほとんどの参加者がインフレは中期的に2%に上昇すると認識=現状維持(据え置き)がベストだとほとんどの人が思ってるよ
また、政策金利の引き上げは、米国経済の重しになる可能性があることから、景況感に関するコメントにも、多くの人の注目が寄せられます。
- 多くの参加者が米国の成長を安定期に入ったと確信している=そろそろ利上げしてもいいという人多数だよ
- 数人の参加者が中国が米国経済の足かせになると懸念=数人の参加者が利上げに反対しているよ
FOMC議事録では、そのコメントにも注目が集まりますが、最終的には決議は多数決で決まりますので、12名の人物のうち、誰が何を言ったか、誰がどういう認識を持っているか、という点にも注目が行きます。
例えばわかりやすく言うと、前回のFOMC議事録で「少数が利上げ賛成」だったのが、今回「ほとんどの参加者が利上げ賛成」と文言が変わっていれば、それは文字通り、利上げに関して楽観的な人の割合が増えたことがわかります。
仮に今回政策金利が据え置きだったとしても、確実に利上げの時期が近づきつつあることを示唆していることになるため、マーケットはドル買いに動くことになります。
FORMは一攫千金の大チャンス
議事録に関していえば、初心者の方はそれほど深読みする必要ははなく、利上げ、インフレ、景気に関する文言に注目しておけば十分でしょう。
が、何度も言うように、各国の金融政策は一国の命運を左右しかねない大事です。
しかもそれが世界の中心的存在である米国のものなら、相場に与えるインパクトは米国だけにとどまりません。
だから、前もって米国の利上げや利下げの時期を予想することができれば、相場の大変動に乗じて、莫大な利益を上げることも不可能ではありません。
だから、議事録の内容を深読みしようとするアナリストや投資家が後を絶たないわけですね。
単に政策金利が引き上げ(下げ)られたかどうかだけでなく
- 賛成派と反対派がどの程度の割合か
- 12人のメンバーのうち、誰がどちらに属しているか
などにも注視しておけば、今後のFOMCの金融政策の行方を読み取ることができるかもしれません。
ちなみにFOMCの12人のメンバーの名前は公表されているわけで、主に米主要都市の地区連銀総裁などですから、1人1人過去の発言を調べることも可能で、それらから「誰がタカ派(強硬派)あるいはハト派((慎重派)なのか」などを考察することもできます。
興味のある方は、そういったサイト(英語サイト)もチェックしておくと、よりFOMC議事録の内容を理解することができます。