FXは取引通貨ペアを決めるところから始まる
FXは、まず取引通貨ペアを決めるところから始まります。
FXの相場を動かす要因は、通貨ペアによって様々なので、正確な分析のためには、自分が取引する通貨ペアの特徴はしっかりと押さえておかないといけません。
ここでは、米ドル、欧州ユーロ、英ポンド、豪ドルの4つの主要国とその通貨についてその特徴をまとめてみました。
目次
米ドルは世界の基軸通貨
米ドルは、言うまでもなく、世界最大の経済大国であり、同時に世界最強の軍事国家であるアメリカ合衆国の通貨で、現在の世界の基軸通貨です。
基軸通貨とは、言葉の通り、世界中のありとあらゆる商品の物差しとして使われる通貨であり、例えば石油もとうもろこしも金も銀もその値段は「○○ドル」という形で表示されます。
勿論、各国の通貨も広い意味では「商品」であるため、1ユーロ=○○ドル、1ポンド=○○ドル、という形式で表示されます。
FXの場合、日本の円が絡む通貨ペアのみ「1ドル=○○円」という、他の通貨とは違った表示形式になりますが、このように1ドル=○○円という表示の仕方を円建て、1円=○○ドルという表示の仕方をドル建てと呼びます。
日本国内でFXをする場合は、勿論、日本での取引になるわけなので、円が絡む通貨ペア(クロス円という)は円建て表示に、それ以外は世界の基軸通貨であるドル建て表示で行っています(ややこしいので注意が必要です)。
ドル円の特徴
米ドルは今も世界最強通貨ですが、2001年の同時多発テロ、2007年のサブプライム危機、2008年のリーマンショックなどにより、米国経済に対する信頼が大きく薄らいだことで、現在は以前ほどの勢いは全くありません。
ドル円のレートは、日本とアメリカの力関係上、はっきり言ってアメリカの態度次第と言える部分が多いのが特徴。
アメリカ側としてはドル安円高のほうが都合が良いのですが、同盟国である日本への配慮もあるため、これ以上、円高にすることだけは勘弁してくれている?ようです。
そのためか、1971年以降、長い目で見るとドル円はずっと円高トレンド(360円→100円)でしたが、最近は底をうった様子が見えています。
通常、通貨の強さはその国の強さとほぼ同義であり、為替レートには当然それが反映されます。
が、米国と日本の例を見るまでもなく、例えば「自国通貨が安いほうが都合がよい」と考えれば、その国は自国通貨安へと動くよう誘導しますので「力のある国の通貨が高くなる」という単純な図式が成り立つわけではありません。
ユーロは第2の基軸通貨?
ユーロは欧州24か国で使われている通貨で、米ドルに次ぐ重要な地位にあります。
2008年のリーマンショック以来、米ドルに対する信頼が揺らいだこともあって、米ドルにとってかわる第2の基軸通貨と呼ばれる時期もありましたが、その後発生したギリシャ危機など、欧州債務問題が浮彫となり、ユーロという通貨システムそのものの存在すら危ぶまれるほどにまで、現在はその信頼が低下してしまっています。
ユーロドルの特徴
欧州は、日本同様、米国にその経済を依存しているため、米国の経済状況次第で、レートが大きく動くことが多いです。
要するに、米国経済悪化でユーロ買いドル売りになり、米国経済回復でドル買いユーロ売りになりやすいです。
ただし、世界中のFXトレーダーの目が「世界経済」というより大きな視点に移っている場合、米国の景気が良くなることは世界経済が良好になることを意味し、同時にそれはユーロ経済の景気へと繋がることを意味するため、米国の経済指標が良い結果になった場合でも「ユーロ買いドル売り」になる場合が過去にはありました。
ちなみに欧州連合といっても、欧州の経済はその中心であり、圧倒的な経済力を持つドイツに依存しているので、ユーロ関連の注目経済指標はECB(欧州中央銀行)の発表する政策金利とドイツのIFO景況感指数だけといっても過言ではありません。
ユーロ円の特徴
ユーロと円は、実は実際に交換されることはありません。
何度も言いますが、現在はドルが基軸通貨なので、仮に日本の銀行が円を売ってユーロを買いたいと思った場合、まず円をドル円レートに従ってドルに両替し、その後、ドルをユーロドルレートに従ってユーロと交換する、という回りくどいやり方を取ります。
要するにユーロ円のレートは「ユードドルのレート」と「ドル円のレート」を掛け合わせたものというわけです。
これは英ポンドや豪ドルなども同じであり、そのため、ユーロ円、ポンド円、豪ドル円などはクロス通貨と呼ばれ、ユードドルやポンドドルなどのストレート通貨と区別されます。
当然、ユーロ円の値動きは、ユーロと日本の直接の力比べではないため、両者の力関係で推し量ることはできません。
ユーロとドル、そして円とドル、の2つの通貨ペアのレート分析が必要になってくるため、トレンドが読みづらいのが特徴で、これはクロス円通貨全体に言えることです。
ただし、ストレート通貨よりもクロス円通貨のようが、レートの小数点以下が少ないため、損得計算がやりやすいので、日本ではクロス円通貨で取引する人のほうが多い様子です。
ポンドは世界最弱通貨?
ポンドは英国(イギリス)の通貨であり、第二次世界大戦後、米ドルにとって代わられるまで、世界の基軸通貨だったという歴史があります。
が、それ以後は、下落傾向が続いており現在は世界最弱通貨などとも呼ばれ、ドルやユーロと比べると、取引量は多くありません。
ただ、取引量が少ない通貨ほど、ヘッジファンド等、莫大な投資資金を持つ投資機関による為替介入(大量の買いや売りを浴びせることにより為替を操作すること)が行われやすいため、非常に値動き(ボラティリティ)が大きく、ユーロよりも投機的な通貨と言われています。
ポンドドルの特徴
ポンドドルは、ユーロ同様、イギリスがアメリカ経済に依存しているため、米国の経済指標によって動く場合がほとんどです。
英国側の主要な経済指標はBOE(イングランド中央銀行)が発表する政策金利と北海油田関連のニュース、あとはユーロの影響も多少受けるため、ユーロにつられて、ユーロドルと同じような動きをすることも少なくありません。
ポンド円の特徴
ポンド円は「暴れ馬」の異名を持つ通貨ペアで、全通ペア中、もっとも値動きが荒いことで有名です。
ポンドの持つボラティリティの大きさとクロス円通貨特有の動きの読みにくさが合わさり、指値やストップロス注文を巻き込んで、買いと売りの思惑が交錯しやすく、暴れ馬という名にふさわしい、豪快な値動きをします。
そのため、ポンド円は、昔から「投機通貨」ペアとして世界中の投資家に認識されていて、リスキーであると同時に、非常に人気の高い通貨ペアでもあります(よくFXで億万長者になった人の特集が雑誌やニュースで取り扱われたりしますが、彼らが愛用している通貨ペアはポンド円かポンドドルの場合が多い模様)。
FXはよくサーフィンに例えられますが、サーフィンの場合、波が大きければ大きいほど、技量が必要とされますが、うまく波に乗れた時は、爽快感は大きくなります。
為替取引もそれと同じで、値動きが大きければ大きいほど、うまくいった時の利鞘は大きくなります。
が、当然、荒波は乗りこなすのが大変なため、初心者向きではありません。その部分はサーフィンもFXも同じです。
そのため、FXの入門書などでは、FX初心者は値動きがもっとも穏やかなドル円からはじめましょう、と書かれている場合が多いです。
豪ドルは日本では大人気
豪とはオーストラリアのこと。
オーストラリアは、経済規模はアメリカや欧州、日本と比べて大きくないため、金利を比較的高めに設定して、他国からの投資を促す戦略をとっています。
金利を高めに設定することにより外貨を得ようとする国は、経済規模の小さな国(南米や南アフリカ)など多々ありますが、それらの国の通貨に投資することは、高金利という利点はあるものの、それなりのリスクがあります。
その点、オーストラリアは比較的経済力も安定していて、観光地として日本では馴染みのある国でもあります。
そのため、情報も得られやすく、安心感へと繋がってるためか、豪ドルは高金利通貨として長期スワップ派の日本人FXトレーダーに、極めて高い人気を誇っています。
高金利通貨であることから、豪ドルは、円キャリートレードの対象となりやすく、2008年の金融危機に大きく下げ「円キャリートレードの時代はもう終わった」と言う声が聞かれるようになった後も、豪ドル円は再び、上昇トレンドを描き、一時、豪ドルは対ドルでのレートが1,000を超えた時もあったほどです。
豪ドルの値動きの要因となるもの
各国同様、政策金利の変動に加え、オーストラリアは資源国であることから、原油価格など資源エネルギー価格が上昇すると、買われやすくなります。
また、オーストラリアは資源を主に中国に輸出しているため、中国の景気が、大きく豪ドル相場に影響します(中国の景気が良いと資源がよく売れ、オーストラリアの利益に繋がるため)。
米国の経済に依存している欧州、日本、イギリスとは、その点が少し違うと言うことができます。