低スプレッド業者儲けの秘密はマリーとカバー
FXでは、今はもうほぼ全ての業者が手数料無料になっています。しかも実質の取引手数料であるスプレッドはどんどん狭くなる一方です。
取引所取引である、株式投資の世界では、手数料が証券会社の利益になりますが、では、相対取引であるFX業者は一体どうやって利益を得ているのか。
こんなに低スプレッドでも儲かるのか。
そこには相対取引ならではのビジネスモデルが存在しているようです。
低スプレッド業者はマリーで儲けている
マリーとは、相殺を意味する投資用語です。
マリーを簡単に説明すると、例えば、あなたがドル円を100.10円で1万通貨買い発注したとします。
と全く同じタイミングで、どこかの誰かがドル円を1万通貨売り発注したとします。
この場合、FX業者は二つのオーダー(買いと売り)を相殺することが可能です。
この行為を為替業界では、マリーと呼びます。
マリーを行うことで両者の発注はなかったことになり、スプレッド(AskとBidの価格の差)分がFX業者の利益になります。
会員がたった二人でドル円1万通貨(100万円)での取引なら、マリー益は微々たるものですが、大手のFX業者だと、開設口座数は数十万。一ヵ月の総取引高は100兆円以上にもなります。
つまり、1日に何十万人ものFXトレーダーが買いと売り、どちらかの注文を頻繁に繰り出し、しかも合計するとかなりの金額が動くわけですから、多くの人の発注はマリーを行うことでなかったことにできます。
大手のFX業者はこのマリーを行うことで、ほぼノーリスクでかなりの金額を丸儲けすることができますが、マリーで儲けるためには多くのトレーダーに支持され、多くの人が日々トレードを行っている業者である必要がありますので、実際これで十分な利益が出ているFX業者は、有名どころのごく一部の人気業者だけ、だと思われます。
マリー取引のようなものを、ギャンブル業界ではオーダーを呑む、といい、呑み行為として違法行為に当たりますが、金融業界では合法化されているようなので、別に問題はないようです。
マリーは、ともすると呑み行為として批判されることもありますが、そのおかげで私たちトレーダーは低スプレッドの恩恵を受けているのも事実ですから、ユーザー利益に繋がっているわけで文句が言えるはずもありません。
カバー取引でマリーの穴を補う
ただし、いくら大手のFX業者と言えども、顧客の全てのオーダーをマリーできるわけではありません。
例えばドル円が強い上昇トレンドにあるような場合だと、買いオーダーは多くても、売りオーダーは非常に少ないはずです。
とあるレートでの買いの総額が5億円、売りが1億円とかなら、マリーできるのは1億円だけ。
4億円分の買いオーダーはそのまま残ることになります。
この場合、残ったオーダーは、カバー先の取引銀行(カウンターパーティーと呼ぶ)に流すことになります。
つまり、FX業者がカウンターパーティーを通じて、インターバンクに、4億円分のドル買い(円売り)オーダーを発注し、先ほどの顧客が損切りあるいは利食いする際に、今度は、同じようにドル売り(円買い)をして、顧客にお金を戻すことなります。
このように、顧客のオーダーをカウンターパーティーにそのまま流すことをカバー取引と呼ぶわけですが、これは株式投資で証券会社が証券取引所を相手に顧客のオーダーをまる流しするのと全く同じ仕組みです。
カバー先の多いFX業者ほど有利
ただし、株の証券会社が取引手数料を顧客から貰っているのとは違い、FXでは取引手数料はスプレッド分だけです(実際はスリッページもありますが)。
私たちがFX業者で取引する場合、実質スプレッド分の手数料を払っているわけですが、FX業者がインターバンク市場でカバー取引をする場合もスプレッド分の手数料を支払う必要があります。
問題となるのは、前者と後者、どちらのスプレッドが狭いか、という点。
つまり、FX業者のドル円のスプレッドが0,3銭で、インターバンクのドル円のスプレッドが1銭なら、FX業者はカバー取引をすればするほど、その差「0,7銭×取引枚数」づつ、損失が膨らんでいくことになります。
カウンターパーティーの多いFX業者の場合、各FX業者の提示すAskとBidの中から、有利なものを選ぶための選択肢が増えますが、それでも、顧客に提示しているスプレッドよりも狭いスプレッド提示をインターバンクから受け取ることはまずありません。
インターバンクのスプレッドは、時間帯のおよそ8割以上で、どのFX業者のスプレッドよりも広くなるそうです。
ちなみに以下はカバー取引のイメージ図です。
とすると、FX業者が利益を出すためには、マリー取引での利益>カバー取引での損失が必須、ということになります。
- マリーでの利益>カバーでの損失が絶対条件
- 取引高の多いFX業者がマリー益は多くなる
- 取引先の多いFX業者がカバー取引での損失が少なくなる
- 結局、人気のFX業者に顧客が集中する
まとめると、多くのアクティブ・トレーダーに愛用されていて、信頼度が高く、取引先銀行が多いFX業者ほど、低スプレッドを提示することが可能になります。
筆者がFXを始めたころは、国内FX業者は数えきれないほどありましたが、現在は10社くらいに絞られてきています。
今後はおそらくもっと粛清が進む気がしますし、ぜひ、進んでほしいものです。
何故なら、そのほうが私たちにとって都合が良いからです。
もっとスプレッドを狭くしろ、とかスプレッドが酷い、とか文句ばかり言うFXトレーダーは多いですが、FX業者はボランティアではありません。利益を追求する企業です。利益が出なければ、破たんするしかありません。
インターバンク市場にもスリッページはあるので、カバー取引での損失を少なくするためには、私たちもスリッページをある程度は受け入れる必要があります。
あるいは、皆で共謀して(笑)全てのFXトレーダーが2,3社のFX業者だけで集中して取引をするとかすれば、更にスプレッドも狭く、不利なスリッページも減ることになるでしょうが、これはまだまだ先のことになりそうです。
競争力のないFX業者には、業界からさっさと退場して欲しいものですね。