自己資本規制比率でFX業者を比較
自己資本規制比率とは、FX業者など金融機関の財務上の健全性を計るための指標で、業界の健全性を高めるために、規制が導入されました。
FX業者の営業活動には様々なリスクが存在しますが、それらのリスクを金額として表し、そのリスク相当額に対して、どれだけ対応できる財務力があるかをパーセンテージ表示したものです。
簡単に言うと、これが低いと倒産の恐れがあるということで、投資家にとっても無視できない項目だと言えます。
FX業者が抱えるリスク
自己資本規制比率を算出する計算式は以下の通りです。
固定化されていない自己資本の額÷リスク相当額×100
リスク相当額という言葉の説明は話が長くなるので、省略します(特に理解する必要はないと思います)。
前述したように、FX業者はいろいろなリスクを抱えています。
一番わかりやすいのが、為替相場の大変動によって生じる「市場リスク」でしょう。
FX会社は基本的に私たち個人トレーダーの注文をインターバンク市場に流しますが、インターバンクにはロスカットの仕組みがありません。
要するにFX業者のディーラーは私たちと違って容易に損切りができない状態にあるため、レートが飛ぶような相場の暴騰・暴落が生じると大変なことになります。
例えば、個人投資家がドル円を100,00円で100枚購入したとします。
当然、その場合、FX業者もドル円100,00円でインターバンクにドル円の買い注文を出します。
その後、ドル円が大暴落、1時間くらいの間に50円まで下がったとします(まずありえませんが、話を簡単にするためにそうなったと仮定します)。
個人投資家の場合、例えそうなっても、99,50円にストップロス(逆指値)を置いておけば、-50銭の損失で済みます。
しかし、インターバンクにはストップロス注文なんて都合のいいものはありません。
大暴落が起きれば、誰も買い手がいませんから、レートは飛びまくり、途中、売ることもできずに、落ちるところまで落ちてしまいます。
つまり、FX業者の損失は-50円(5000pips)。
個人投資家の損失はFX業者の利益になるので、正確には-4950pipsですが、はっきり言って、この場合、リスクヘッジできているとはとても言えませんよね。
実際におこったスイスフランショックの衝撃
実際、2015年1月15日に起こったスイスフランショックでは多くの海外FX業者(FXCMなど)が倒産しました。
国内FX業者でも、スイスフラン円のレートが10分の間に50円近くとんだ業者も存在し、ストップロスや強制ロスカットが正常に作動しないといった事例が多発、個人投資家が多額の借金を負う事態になったため、FX業者との訴訟にまで発展したようです(現在は、FX業者が個人投資家の損失を補てんする形で話がまとまりつつあるようです)。
勿論、スイスフランショックのような大暴落はそうそう起こるものではありませんし、スイスフランで取引をしている投資家が日本にはあまり多くないことから、国内FX業者の損失額はそれほど大きいものではなかったため、海外FX業者のような事態は免れましたが、それでも、個人投資家の損失を負担しなければならない以上、相場の変動リスクは相当なものだと言えます。
要するに、個人投資家同様にに、FX業者にも、いつどういった形でリスクが降りかかってくるかわからないわけで、リスク管理が必要というわけです。
何か起こった時に、即座に動かせるお金が、リスク相当額に対してどれくらいあるか。
話が長くなりましたが、それを表したものが自己資本規制比率であり、FX業者は毎年3月、6月、9月、12月の末日の年4回、自己資本規制比率を公表する義務を負っています。
しかも、この自己資本規制比率が140%以下で、金融庁への届出が必要となり、120%以下で業務改善命令が下され、100%以下になると、3ヶ月以下の業務停止もしくは、最悪の場合、金融庁から登録取り消しのお達しになってしまいます。
FX会社が倒産するとどうなるのか
FX会社が倒産するとどうなるかというと、勿論、投資家の口座資金は、信託保全によって、FX業者の資産とは別に信託銀行に管理されているため、口座資金は100%返却されます。
しかも、倒産しても、別の業者が買収してくれる場合が多く、慣れ親しんだ取引ツールがもう使えない、口座乗り換えないといけない、ということには必ずしもなりませんが、そうなる可能性もあります。
何より、含み損を抱えたポジションが強制的に閉じられる可能性は大。また、そのFX会社のコンプライアンスなど、企業体質が変わる恐れもあります。
そう考えると、やはり倒産されると困るわけで、既にお金のやりくりに困っているよなFX業者はできれば選びたくありませんよね。
自己資本規制比率ランキング
というわけで作成したのが以下の表(FX業者自己資本規制比率ランキング2015年12月)です。
小数点以下は四捨五入して表示しています。
FX業者 | 自己資本規制比率(%) |
---|---|
外為どっとコム | 1257 |
ワイジェイFX | 1184 |
インヴァスト証券 | 1166 |
上田ハーロー | 975 |
SBIFXトレード | 811 |
ひまわり証券 | 627 |
セントラル短資FX | 621 |
FXTS | 575 |
外為オンライン | 546 |
マネーパートナーズ | 531 |
M2J | 520 |
IG証券 | 508 |
FXプライムbyGMO | 500 |
OANDA JAPAN | 499 |
アヴァトレード | 462 |
JFX | 450 |
GMOクリック証券 | 391 |
DMMドットコム証券 | 311 |
FXトレードフィナンシャル | 306 |
ヒロセ通商 | 245 |
トレイダーズ証券 | 218 |
ライブスター証券 | 204 |
表を眺めてみるとわかりますが、上から下までFX業者によってかなり差があることがわかりますね。
しかも、この1年間で100%前後変化した業者もあることから、140+100=240%以下の業者は黄信号がともっていると言ってもいいかもしれません。
最新の自己資本規制比率は、各業者の公式サイトに掲載されています(3月、6月、9月、12月末に更新)。
自分が使っている(あるいはこれから口座を開設しようとしている)業者の財務基盤なんて、今まで気にしたことがない人が多いかも知れませんが、今後、スイスフランショックのようなことがないとは限りません。
業者が倒産してしまえば、追証により借金が発生する可能性もあります。
そう考えれば、FX業者の財務基盤にも多少は気を配っておきたいものですね。