ストキャスティクスの基本的なシグナルと使い方
ストキャスティクスは、1950年代にジョージ・レインという人が発案した非常に歴史のあるテクニカル指標です。
RSIと同じく、オシレーター(振り子)系であり、相場の買われ過ぎ、売られ過ぎを判別するためのもので、RSI同様、逆張りが有効なレンジ相場には強いですが、トレンド相場には弱いという特徴があります。
目次
ストキャスティクスの基本的なシグナルの見方
ストキャスティクスを構成する3つのラインは「%K(パーセント・ケー)」「%D(パーセント・ディー)」「%SD(パーセント・スロー・ディー」と呼ばれますが、そのうちの基本となる%Kについてまず解説します。
%Kは以下のように算出します。
%K=(当日の終値-過去N日間の最安値)÷(過去N日間の最高値-過去N日間の最安値)×100
「過去N日間の最高値-過去N日間の最安値」とは、過去N日における「相場の天井-底」のことですから、%Kは、当日のレートが「過去N日の底からどの程度(%)上昇した位置にいるか」を表示したもの、と見ることができます。
%Kが0%ということは、現在のレートが過去N日間の最安値ということであり、%Kが100%ということは、現在のレートが過去N日間の最高値であることと同義です。
一般に%Kが80%以上で逆張りの売りサイン、20%以下で逆張りの買いサインとされています。
ファスト・ストキャスティクスはトレンド相場では使えない?
ストキャスティクスの欠点は最初に述べたように、トレンド相場に弱い、ことですが、例えば上昇トレンドが継続中で、直近の高値を更新し続けている場合を考えてみてください。
高値を更新し続ける(安値を更新し続ける)ような相場の場合、ストキャスティクスの%Kは、常に100%あるいは0%を維持し続けることになります。連続で高値を更新する日がある場合は、ずっと100%の位置で%Kが高止まりすることにもなるわけです。
同じ相場の強弱を読み取るためのオシレーター系指標であるRSIの計算式を参照していたけるとわかると思いますが、RSIでは余程のことがない限りこういったことは起こりません。
が、%Kの場合、このようなケースが頻繁に起きます。日足ではめったに高値を更新しつづける、なんてことはないかもしれませんが、分足や時間足チャートでは、こういったケースは良くありますよね?
とすると、これはもう「トレンド相場に弱い」といったレベルではなく、トレンド相場では全くの役立たず、と言っても過言ではないのかもしれません(レンジ相場でも反応が敏感過ぎてダマシが多くなる傾向にあります)。
そのため%Kの動きをより滑らかにするために、%Kの移動平均線である%Dというラインをストキャスティクスでは用いられます(一般に%Dは%Kの3日移動平均線を用います)。
%Kを「反応の敏感すぎる短期移動平均線」、%Dを「反応の遅い中長期移動平均線」としてみたて、そのゴールデンクロスやデッドクロスでシグナルを見るわけです。
このように%Kと%Dという2本の線を使ったストキャスティクスのことを一般にファスト・ストキャスティクスと呼ぶのですが、このファスト・ストキャスティクスは、あまりトレーダーの間では人気がなく、ほとんど用いられていません。
何故なら、やはり動きが激しすぎるためにだましが多くなりすぎるからです。
下の画像は青が%K、赤が%Dですが、実際の価格やRSIと比べて、明らかに乱高下が激しいのがよくわかると思います。
%Kや%Dが100%付近に到達する確率が非常に高く、強い値動きのある相場では、相場判断がつきにくい局面が少なくありません。
スローストキャスティクスとの違い
上記の理由で、一般的にストキャスティクスと言えば、上記のファスト・ストキャスティクスではなく%Kの代わりに%Dの移動平均線である%SDというラインを用いた「スロー・ストキャスティクス」のことを指します(%SDは%Dの3日移動平均線にするのが一般的)。
スロー・ストキャスティクスでは、%Dを短期移動平均線の代用、%SDを中長期移動平均線の代用として、ファスト・ストキャスティクスと同様に、売買シグナルを判断することになります。
以下の画像では、ファスト・ストキャスティクスとスロー・ストキャスティクスを両方表示させてあるので、よく見比べてください。
上(ローソク足チャートの下)がファスト・ストキャスティクス(%Kが青、%Dが赤)で、その下がスロー・ストキャスティクス(%Dが青、%SDが赤の点線)になります。
ほんの少しだけですが、かなり動きが滑らかになっているのがよくわかってもらえるのではないでしょうか。
ストキャスティクスの一般的な売買シグナルの見方
一般にストキャスティクスの売買サインは以下のようにみると、成功率が高い、とされています。
- %Dが80%以上かつ%SDとデッドクロス:売りサイン
- %Dが20%以下かつ%SDとゴールデンクロス:買いサイン
- %Kは先行指標として参考にする
ただし、あくまでストキャスティクスは相場の「買われ過ぎ、売られ過ぎ」を判別する「逆張り系」の指標であるため、強いトレンドのある、値動きの強い相場では、基本的にだましが多くなる傾向にあります。
これはスロー・ストキャスティクスでも同じです。
ストキャスティクスが基本的にレンジ相場での逆張り戦術用だということを忘れず、使いどころを間違えないようにすることこそが、トレードを成功に導くための最も重要な要素です。