コイントストレードだけで勝つことはできるのか?
コイントス投資法というのをご存じでしょうか。
言葉の通り、チャートやファンダメンタルズ分析を一切せずに、買いか売りかをコイントスの結果のみにゆだねる投資法のことです。
このコイントストレードだけでFXで利益を積み上げていくことができるのか?
10年ほど前ですが、とあるベテランFXトレーダーが書籍でこのコイントストレードの有用性を紹介していたこともあってか、一時、2chをはじめ、いろいろなところで議論されました。
結論はでなかったようですが、いろいろと面白い議論がなされ、FX初心者も上級者も、知らない人はぜひ知っておいて損はないと思いますので、紹介してみたいと思います。
コイントストレードの有効性が議論されるようになったきっかけ
コイントストレード。
一見すると、非常に馬鹿げた手法ですが、一体、何故、この投資法が一時多くの個人投資家の間で話題になったのか。
それは前述したように、とあるベテランFXトレーダーが書いた1冊の著書の影響のようです。
その著書とは魔術師に学ぶFXトレード―プロ化する外国為替市場への普遍的テクニック。
スーパートレーダー集団「タートルズ」やラリー・ウィリアムズ、トム・デマーク、トム・バッソなど、世界的に著名なトレーダーたちの理論や投資手法を紹介するとともに、プロトレーダーにはない個人トレーダーの優位性(エッジ)について述べている本です。
この本の中でトムバッソがとある講演で述べた以下のような質疑応答が紹介されています。
トム:「おそらくそのとおりだ」
続いて、トム・バッソ氏のトレードルールと実験データが示されるのですが、彼のトレードルールは非常にシンプルで、簡単にまとめると以下のようなものになります。
- 1回取引あたりの損失限度額は必ず資金の1%以下にする
- ペイオフレシオ(利食い幅÷損切り幅)は3以上にする
- ペイオフレシオ3のラインにトレーリングストップを置く
- あとはロングかショートかはコイントスでOK
1はリスクコントロール、2は損小利大重要性を、3はトレーリングストップの有用性をあらわしているのは説明するまでもありませんね。
いずれもFXの入門書で、誰もが一度は耳にしたことのある単語だと思います。
トムバッソ氏は、10の先物取引市場で上記のトレードルールで実験、結果は手数料やスリッページを差し引いても十分な利益を上げ続けることが可能、というものだったそうです。
トム・バッソ氏の提示したシンプルなトレードルールとその実験結果は、多くのトレーダーに衝撃と感動を与え、それが2ch等の掲示板における議論等に繋がったようです。
コイントストレードの2つのルール
ちなみに、巷であふれているコイントス投資法のルールは2種類あって、一つは上記のトム・バッソの提唱したもの。
そしてもう一つは2chで掲載されていた以下のトレードルールです。
- コイントスで「表」が出たらロング「裏」がでたらショート
- リミット、ストップともに30pips
- 取引枚数は証拠金10万円につき2枚まで
- 勝ったら次は倍の枚数でエントリー
- 負けても2連勝しても3に戻る
買いか売りかをコイントスで決めるという部分は同じ。
取引枚数の制限によるリスク管理の部分もほぼ同じですね。
このリスクを常に一定に保てば10連敗しても53,860円残る。
20連敗でも29,010円が残る
10連敗の確率1/1024で20連敗の確率1/1048576。
リミット・ストップが30pipsなのは、これより下だと取引コスト(スプレッド)がネックになり、これより上だと取引回数が少なくなるため、という理由だそうです。
この辺りの考え方は当サイトでも以前述べましたね。
「勝ったら次は倍でトレード」という部分は深い意味はわかりませんが、おそらく損小利大を狙ったもの。
前者が利食い幅と損切り幅に差を持たせることで損小利大を目論んだものですが、後者はリミット・ストップともに同じなので、ポジションサイジングに工夫をしているようです。
で、問題は「このトレードルールで果たして勝ちつづけることが可能なのか?」ですが、前者は「一度動き始める大きく動く」という為替相場の性質を利用しているためその有効性は単純に数学で証明することは不可能ですが、後者は数学的には、30pips上がる確率と30pips下がる確率が同じ場合、上記のルールだと取引回数が無限回に近付けば近づくほど、結局利益はプラスマイナス0になり、手数料分だけ損する計算になります。
にもかかわらず「実際やってみたら勝てたぞ!」という声が非常に多かったのが印象的でした。
考えてみれば、FXは8割が負け組と言われているわけですから、そういった人たちからすればプラスマイナス0でも「意外に勝てた!」という気になるのは無理のないことなのかもしれません(笑)。
実際にバックテストしてみた結果は?
ちなみに上記の2種類のコイントス投資法。
トム・バッソ氏版
- 1回取引あたりの損失限度額は必ず資金の1%以下にする
- ペイオフレシオ(利食い幅÷損切り幅)は3以上にする
- ペイオフレシオ3のラインにトレーリングストップを置く
- あとはロングかショートかはコイントスでOK
2ch版
- コイントスで「表」が出たらロング「裏」がでたらショート
- リミット、ストップともに30pips
- 取引枚数は証拠金10万円につき2枚まで
- 勝ったら次は倍の枚数でエントリー
- 負けても2連勝しても3に戻る
面倒なので、前者のルールだけですが、筆者が1万通貨で仮想運用してみました(利食い幅90pips、損切り幅30pipsに設定、トレーリングストップは設定していません)。
本当はプログラムを組んで数年分くらいのデータを使ってバックテストをしてみたかったのですが、残念ながらそんな技術ありませんので、全て目視でやりました(笑)。
たったの30回ほどの試みでしたが、結果は以下のようになりました(適当に選んだ相場で上か下かも適当です)。
- 負けマイナス30pips
- 負けマイナス60pips
- 勝ちプラス30pips
- 負けプラマイ0
- 負けマイナス30pips
- 勝ちプラス60pips
- 負けプラス30pips
- 勝ちプラス120pips
- 負けプラス90pips
- 負けプラス60pips
- 負けプラス30pips
- 負けプラマイ0
- 負けマイナス30pips
- 勝ちプラス60pips
- 負けプラス30pips
- 負けプラマイ0
- 勝ちプラス90pips
- 負けプラス60pips
- 負けプラス30pips
- 負けプラマイ0
- 負けマイナス30pips
- 負けマイナス60pips
- 負けマイナス90pips
- 負けマイナス120pips
- 勝ちマイナス30pips
- 勝ちプラス60pips
- 負けプラス30pips
- 負けプラマイ0
- 負けマイナス30pips
- 勝ちプラス60pips
なんと結果は60pipsのプラスでした(スプレッド0.3pips×30=9pipsなので、利益は51pips)。
8勝22敗の約勝率2割6分7厘。
最大ドローダウンは180pips(6連敗)。
ペイオフレシオが3なので勝率2割5分以上でOKだと事前に知ってはいましたが、やはりペイオフレシオが3もあると、意外に土俵を割らないものだと改めて実感(連敗が7連続で続いた時はさすがにトータルでマイナスになるものだと思いました)。
しかし、30回もトレードして利益がたったの50pipsにも拘わらず、最大ドローダウン180pipsという結果には、実際このルールで本番トレードができるか、というと、ちょっと怖い、というのが本音です。
ただ、今回のは本当に適当に選んだ相場局面で適当にエントリーしていったので(明らかに上昇トレンドが発生してると思われている場面で売りで入ったり)、そういった「誰が見ても明らか」な局面での適当エントリーをさけたり、あるいは基本のトレンドフォローを心がければば、もっと勝てていたのでは、とも思っています。
何より、これだけ適当にトレードしても、ルール(特に損切りルール)さえしっかり守っていれば、そんなに短期間で一気に資金を失うようなことがない、ということが再確認できたのは、大きかったと思っています。
たった30回のトレードで、しかもトレーリングストップを設定しませんでしたが、トム・バッソ氏の「手仕舞いとポジションサイジングだけが重要で、それさえ正しければコイントスの表か裏かでロングかショートを決めても安定して利益が出せる」という言葉と実験データは決してホラではないというのが私の実感です。
- 複雑なトレード手法を利用するも全く勝てない人
- やればやるほど資金が減っていき、FXが怖くなってきた人
こういった人にはこのコイントストレード、非常にお勧めの投資法だと思います。
何よりもルールを守ってトレードすることが最重要である。
このことを実感することできるだけでも一度試してみる価値はあると思いますよ。