最大ドローダウンの本当の意味を知ってしっかりリスク管理をしよう
最大ドローダウンとは、累積損益が過去最大の時から、一時的にどれくらい利益が減ったか、を指し示すものです。
システムトレードでよく使われる言葉で「最大累積損益pipsから最低累積損益pips」までのようにpipsで表わされる場合もあれば、差額(円)やパーセンテージで表わされる場合もあります。
システムトレードに限らず、自分の取引における過去最大のドローダウンがいくらであるか、しっかり把握しておかないと、リスク管理が十分であるとは言えません。
目次
最大ドローダウンはリスク管理の基本中の基本
最大ドローダウンは、言葉にすると結構意味がわかりにくく、誤解している人も多いと思うので、詳しく説明してみます。
例えば、投資資金100万円からFXを始めたとします。
半年くらい運用した結果以下のように口座資産が推移したとします。
- 最初の1ヵ月で100万円→150万円
- 2ヵ月目で150万から130万円
- 3か月目で130万から90万
- 4ヶ月目で90万から120万
- 5か月目で120万から70万
- 6ヶ月目で70万から200万円!
この場合、最大ドローダウンはいくらでしょうか?
最大ドローダウンに関するよくある勘違い
- 最大ドローダウンは、損益グラフの山頂から谷の底までの下落幅(下落率)のことでしょ?だったら、山頂が200万で、谷底が70万だから、130万じゃね?
- 5か月目に120万から70万へ一気に減っている。期間中、これが一番の下落幅。だから最大ドローダウンは50万円。
上記のように思っている人がたまにいますが、勿論いずれも間違いです。
最大ドローダウンは過去のもので常に更新されている
最大ドローダウンは前述したとおり、累積損益が過去最大の時から一時的にどれくらい減ったかを表すもので時間とともに更新していきます。要するに以下のようになります。
- 最初の1ヵ月で100万円→150万円:最大ドローダウン0
- 2ヵ月目で150万から130万円:最大ドローダウン20万
- 3か月目で130万から90万:最大ドローダウンはさらにマイナス40万で計60万
- 4ヶ月目で90万から120万:最大ドローダウン更新されず
- 5か月目で120万から70万:最大ドローダウン、過去の60万を更新せず
- 6ヶ月目で70万から200万円!:最大ドローダウン更新されず
つまり、正解は2か月目から4ヶ月目に発生したマイナス(20万+40万)=60万、となります。
最大ドローダウンの説明に、最大累積pipsから最低累積pipsの差と表記しているFXサイトもあって、その場合、過去最高の利益は200万で過去最低は70万だから最大ドローダウンは130万というふうに計算してしまいがちですが、最大ドローダウンの計算には時間をさかのぼって勘定されることはありません。
この点を勘違いしている人が多いので要注意です。
最大ドローダウンの意味するところ
最大ドローダウンの意味するところは、ずばり今後どれくらい資産が減る可能性があるかということで、これから自分がこれから取ろうとするリスクに対し、どのくらいの運用資金が必要か、に対する指標としてみることができます。
一般に必要運用資金は、最大ドローダウンの約2倍、だと言われていますので、つまり、今まで経験した最大のドローダウンの約2倍の規模のドローダウンを想定して、資産を管理しなければならない、ということです。
運用資金100万円で、最大ドローダウンが50万のストラテジー。これシストレで運用できますか?
裁量トレードにせよ、シストレにせよ、投資は勝ったり負けたりを繰り返します。
もし仮に最初に想定している最悪のドローダウン(50万×2)がやってきたら、一気に運用資金は底をついてしまいます。
こういう資産運用の仕方は、非常にリスクが高い、場合によっては破産してしまう、ということが理解してもらえると思います。
逆に運用資金200万で最大ドローダウン80万のストラテジーだったら、想定しうる最大の危機が、運悪くよーいどんの段階で訪れてしまったとしても、破産することはありません(40万残ります)。しかも、今後持ち直す可能性が残っています。
シストレにおける最大ドローダウン
ミラートレーダー最大手のシストレ24では
推奨証拠金=(必要証拠金 × 最大ポジション数) +過去3ヶ月の最大ドローダウン
として定めています。
これは、運悪く最初に、過去3ヵ月における最大のドローダウンに直面しても、強制ロスカットにならない程度の金額が必要、ということを意味しているわけですね。
もう一つ例を挙げます。
例えば、とあるストラテジーの累計損益が100万円で最大ドローダウン200万のストラテジー、これ、あなたなら運用できますか?
もし、次の瞬間、過去最大のドローダウンと同じ規模のドローダウンが訪れた場合、推計損益は一気に0どころか-100万円になります(FXでは強制決済というルールがありますが)し、何より、100万円のリターン(利益)を得るために、常にマイナス200万円のドローダウンがいつ訪れるかもしれない、そんなリスクを負っている、ともとれます。
そう考えると、非常に分の悪い賭けだということも理解してもらえると思います。
シストレにはリスクリターン率(累計損益÷最大ドローダウン)というものがありますが、上の例のような1を切るストラテジーは、当然、優秀とは言えません。リスクがリターンの2倍もある、いわゆる利小損大ですからね。
最大ドローダウンという用語、シストレをあまりやっていない人にはなじみがないかもしれませんが、実は、裁量トレードでも重要です。
過去の自分のトレード履歴をつけて、常に最大ドローダウンを意識し、それを考慮した上で、運用資産やレバレッジを決める。
裁量トレーダーでここまでリスク管理を徹底している人は、ほとんどいないのではないでしょうか(特に初心者)。
シストレだけでなく、FXにしろ株にしろ、資産運用においてリスク管理は最重要事項であり、最大ドローダウンはそのための指標として多くのものを指し示してくれます。
決して軽視しないようにしたいものですね。