移動平均乖離率の基本的なシグナルと使い方
移動平均乖離(かいり)率とは、移動平均線から価格がどれだけ乖離(はなれること)しているかを数値化し、チャート上に表示させたものです。
時に為替相場では、価格が移動平均線より大きく上昇、あるいは下落する時がありますが、時間と共に、必ず移動平均線に戻ってきます。
この「行き過ぎた価格は結局移動平均に収束する」という考えが根底にある点でエンベロープと考え方は全く同じになります。
移動平均乖離率のシグナル
移動平均乖離率の計算方法は以下のようになります。
乖離率=((終値-移動平均値)の絶対値÷移動平均値)×100
価格が移動平均よりも大きく離れると乖離率の絶対値は大きく、移動平均線と価格が重なると、乖離率は0に収束します。
以下の画像では、メインチャートで21日移動平均線(黄)、サブチャートで21日移動平均乖離率(赤)を表示しています(サブチャートの真ん中の点線が乖離率0のライン)。
乖離率が0のラインから大きく上にある時は、価格のローソク足が移動平均線から大きく上に離れている時なので「買われ過ぎ」と判断して逆張りでの売りが有効であり、逆に乖離率が0のラインから大きく下にある時は、価格が移動平均線から大きく下に放たれている時なので「売られ過ぎ」として逆張りでの買いサイン、と見るのが基本的な見方です。
問題は、どの程度、つまり乖離率が±%以上になればシグナルになるのか、ですが、これは通貨ペア、使っている時間足、相場状況、移動平均線のパラメーターの設定、などにより適切な値が異なります。
以下の画像では、ドル円、日足チャート、21日移動平均線での、ある期間での相場の様子ですが、乖離率が±0,9%を超えた時をシグナルとすると、うまく機能しているようです(サブチャートの緑の横線が±0,9%ライン)。
また、以下の画像はドル円、5分足チャート、14日移動平均線の、とある時間帯での様子ですが、この場合だと、乖離率が±0,07%前後をシグナルとすると、シグナルの的中率が高くなっていることがよくわかると思います。
言うまでもないことですが、長い足のチャートだと、乖離率のシグナルラインは大きめ、短い分足チャートだと、シグナルラインはかなり小さめの数値になります。
上記画像は2つとも短い期間のものですが、いずれも、シグナルラインに達しているのに上昇したりといったダマシが結構な割合で存在することがわかると思います。
また、一般に、株式投資と違い、為替相場の場合、乖離率はあまり上昇しない傾向にあります(値動きが小さいため)。
そのため、株式投資と比べ、大きく利鞘を取ることは難しい、という傾向があります。
ダマシが多く、うまく逆張りが成功しても、それほど利益が出ない。
そのため、移動平均線乖離率はFXではあまり使えない、という声が多いです。
本当に移動平均乖離率はFXではあまり使えない?
付け加えるなら「一度動き始めると1方向へ大きく動き出す」という為替相場の特徴は、逆張りよりも順張りトレンドフォロー戦略のほうが「損小利大」を実現させやすいことを意味し、そのため乖離率のような逆張り型のシグナルではなくボリンジャーバンドのバンドウォークや移動平均線のゴールデンクロスなど、順張り型のテクニカル指標のほうが人気が高い傾向にあるのも、FXトレードのもつ特徴です。
では、移動平均乖離率がFXでは全く使えないのか、と言えばそうではありません。
中には移動平均乖離率を使った逆張りでのスキャルピングで大きな利益を上げているFXトレーダーも存在するようで「取引通貨、チャート足、移動平均線のパラメーター次第では、見事に化ける」という声があるのも事実です。
ネットの口コミなどを参照すると、中には、短期移動平均線乖離率と長期移動平均線乖離率のゴールデンクロスやデッドクロスを用いてトレードを行っている人もいるようで、これはどんなテクニカルツールにも同じことが言えるのでしょうが、要はいかなる道具も使いようであり、工夫次第で、玉にも石にもなり得る、ということを、理解しておく必要があると思います。