FX業者間スワップアービトラージのやり方
裁定取引(アービトラージ)という取引手法があります。
裁定取引とは、同一あるいはよく似た金融商品の1時的に生じた金利差や価格差を利用して、低リスクで利鞘を稼ぐやり方で、鞘(サヤ)取りとも呼ばれます。
一例としては、現物価格と先物価格のずれを用いて行うやり方などが有名ですね。
目次
アービトラージ(鞘取り)の基本的なやり方
基本的にはアービトラージは、現物と先物との間で両建てを行う、といった具合にやるのが一般的です。
例えば、現物価格100円、先物価格150円の金融商品Aを
現物取引で100円で買い。
先物取引で150円で売り。
決算日には現物と先物の価格は一致することを前提とし、その価格が120円だとすると
現物:120円-100円で20円の利益。
先物:150円-120円で30円の利益。
合計50円の利益となります。
決算日の価格が200円だとしても
現物:200円-100円で100円の利益。
先物:150円-200円で50円の損失。
合計50円の利益となります。
決算日の価格が80円だったとしても同様の計算で50円の利益となり、決算期の価格がいずれの場合でも利益は変わりません。
ただし、上記の例の現物と先物のように、両建てする商品の価格のずれが必ず是正されるという前提のもとにしかなりたたないトレード手法なので、見極めが大事になってきます。
FXでのアービトラージ(両建て)の応用
ちなみにFXで裁定取引を応用することも可能です。
やり方としてはまず2通りあって、1つは複数のFX業者間のレートのずれを利用するやり方。
スプレッドが1pipsと仮定し
業者A:ASK100.50 BID100,51
の時に
業者B:ASK100.60 BID100.61
だとすると
業者Aでロング、業者Bでショート、という形で両建てポジションを持ちます。
業者Bのレートが一時的にずれたレートであり、業者Aのレートが適正価格だとすると、業者Bのレートもいずれ業者Aのレートへと近づくことになります。
両者のレートが重なるのがASK100.55 BID100.56だとすると
業者Aでのロングポジションは100.55-100.51=4pips分の利益
業者Bでのショートポジションは100.60-100.56=4pips分の利益
となり、合計8pips分の利益になります。これは業者Aと業者Bのレートがどの地点で重なろうとも同じです(最初の業者のレートの価格のずれからスプレッド×2を引いたものになります)。
ストップ狩りを逆利用する?
異業者間スワップアービトラージの仕組みは以上です。
それほど難しくはないと思いますし、上の例だと10pipsもずれていましたが、スプレッド×2以上、両業者の価格がずれていれば利益が出る計算になりますので、レートがずれている瞬間さえ見つけることができればほぼ確実に利鞘を得ることが可能です。
問題は例えわずかな差とは言え、異なるFX業者の提供するレートが数pipsもずれる瞬間が本当にあるのか、ということです。
私は実際には目にしたことはないのですが、FX業界にはストップ狩りという悪しき風習に関する噂が存在します。
ストップ狩りとは、プレイヤーのストップ注文を狩るために、あえて業者がレートを操作するという行為のことですが、仮に本当にこういうことが行われているとすれば、そのタイミングを見計らうことさえできれば、業者間アービトラージは簡単に行うことが可能です。
ちなみに、以前、筆者も実際にやろうとしたことがあるのですが、すぐにやめました。
理由は、ストップ狩りのタイミングを見計らうには目視でずっとチャートを凝視し続ける必要がありますし、しかも、仮にストップ狩りの瞬間を目の当たりにしたとして、おそらく一瞬の出来事でしょうから、その短い時間の間に、2つの業者で両建てポジションを発注するなんて、手動ではとてもできそうにありません。
結局、業者間アービトラージをやろうとすれば、プログラムを組んでコンピューターに自動売買させる必要がありそうです。
また、言うまでもなく、この業者間アービトラージは、いわゆる秒スキャと呼ばれるものであり、コンピューターに自動で秒スキャをやらせる行為はどこのFX業者でも規約違反になりますので、やっていることがバレれば、口座凍結されても文句は言えません。
要するにFX業者のレートのずれを利用した裁定取引はどうも机上の空論、実現性はほとんど不可能なように思います。
業者間スワップアービトラージとは?
というわけで業者間裁定取引は、プログラミングスキルのあるなしに関わらず、実現性の見込みは相当薄いと言えるのですが、2つ目の方法である業者間スワップアービトラージは、どうでしょうか。
結論から言うと、これは非常に仕組みも簡単であり確実に実現できます。
業者間スワップアービトラージとは、簡単に言うと、買いスワップと売りスワップの差を利用してスワップ金利で稼ぐ方法です。
例えば、A社の豪ドル円の買いスワップが80円、B社の売りスワップが50円だとすると、A社で豪ドル円ロング、B社で豪ドル円ショートという両建てポジションを持つだけで、買いと売りの差30円分のスワップ金利が毎日受け取れます。
というと「え?売りスワップって、普通買いスワップよりもかなり高いよね?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、実はFX業界でたった1社だけ、買いスワップと売りスワップが同じ業者が存在します。
それがDMM.com証券「DMMFX」。
例えばスワップポイントがたくさんもらえることで有名なセントラル短資FXのとある日のスワップポイントは以下のようになっています。
ドル円:買い 15円、売り-20円
ユーロ円:買い-17円 売り8円
ポンド円:買い17円 売り-24円
豪ドル円:買い38円 売り-43円
NZドル円:買い48円 売り-57円
トルコリラ円:買い92円 売り-99円
高スワップ業者として評価の高いGMOクリック証券もSBIFXトレードもワイジェイFXも、トルコリラを取り扱っているかどうかの差はありますが、似たようなものです。
対してDMMFXのスワップポイントは以下のような感じ。
ドル円:買い 8円、売り-8円
ユーロ円:買い-13円 売り13円
ポンド円:買い18円 売り-18円
豪ドル円:買い40円 売り-40円
NZドル円:買い45円 売り-45円
トルコリラがないのが残念ですが、DMMFXは買いスワップはあまり貰えない代わり、売りスワップもかなり安い(買いスワップと同じ)という知る人ぞ知る特徴があります。
例えば、上記のセントラル短資FXとの裁定取引なら1日分のスワップポイントとして
ドル円で7円
NZドル円で3円
がノーリスクで確実にもらうことができます。
少な!
と思った方、期待外れで済みません(笑)。
豪ドル円のスワップが各社80円前後あった時は、この業者間スワップアービトラージで、レバレッジを25倍にすれば、年利10%くらいは余裕で稼げたのですが、今はどうもこの程度が限界のようです。
ヒロセ通商で豪ドル円のロング(スワップ50円)
DMMFXで豪ドル円のショート(スワップマイナス25円前後)
が、一番利益がでそうでした。
このスワップポイントが1年間ずっと続いてくれると仮定するなら、1万通貨での運用で1日25円、1ヵ月で775円、1年で9125円です。
業者間スワップアービトラージ(鞘取り)の場合は、為替変動は気にする必要がないので、思い切って100万通貨(両建てなので200万通貨)で運用すれば年90万円前後の利益がほぼノーリスクで生まれることになります。
必要証拠金は豪ドル円のレートが1ドル80円と仮定すると、80円×200万=1億6000万円が必要です(レバレッジ1倍の場合)。
しかし、スワップアービトラージは、為替差損が固定されるため、レバレッジ25倍で運用しても、それほどリスクはありませんから、レバレッジ25で運用するとして、必要証拠金は640万円程度で年間合計利益は90万円なので、年利14%ほどになる計算です。
あくまで今のスワップポイントが今後もずっと続けばの話ですが、意外と儲かりそうですね。
スワップポイントは日々に変動していることに注意
言うまでもなく、スワップ金利は、各国の経済状況、政策金利等、時期によって大きく異なります。
FX業者のスワップカレンダーを見てもわかるように日々変動しています。
なので、今はいまいちだと感じていても、1月後はどうなっているかわかりませんし、逆に今が絶好調だからと言って、これも1月後どうなっているかはわかりません。
が、運がよければ、上記のようにレバレッジ25倍で運よすれば、年利10%程度は十分に稼げる可能性はありそうです。
なので、DMM.com証券に口座を持ってない方は、いざという時に、口座を開設しておくと後々ほんの少しだけ得することができるかもしれません。
DMMFXは、異業者間で裁定取引をするつもりのない人でも、両建てを多用する人なら、非常に使い勝手が良いので持っておいて損はありません。