第8話:テクニカルツール分析の有効性に対する疑問と答え
第7話の続きです。
1年後のリベンジを誓い、黙々と過去のチャートを使ってテクニカルツールの分析を行うことにした私ですが、1ヵ月も経たないうちに、いきなり壁にぶち当たってしまいます。
それは、おそらく誰もが一度は抱いたであろう、テクニカル分析の有効性そのものに対する疑問でした。
目次
そもそもテクニカル分析は本当に有効なのか?
過去の価格から未来の価格が予測できるはずがない。
チャート分析を否定する人達は皆こういいます。
そして、おそらくほとんどの投資家たちも、一度は、そのように疑問に思った事があるのではないでしょうか。
私はそれまでテクニカルインジゲーターは難しいけれど、使いこなせれば強力なツールになり得る、と思っていました。
少なくとも、あんなにも多くの種類の指標があるのだから、どれか一つくらいは役に立つものがあるはず。
そう思っていたのです。
テクニカルインジゲーターは根本的には皆同じ
しかし、勉強する過程で、ほぼ全てのインジゲーターが同様の考え方によって生み出されていることに気づきます。
- 何らかのルールに従い「過去の価格の平均値」を求める
- その平均値(点)を繋げて平均線にする
- 平均線からの乖離具合で買われ過ぎか売られ過ぎかを判断する
- または短期平均線と長期平均線の位置関係でトレンドを判断する
ボリンジャーバンドもMACDも、ストキャスティクスも移動平均線も、計算式は違えど、根本的な考え方はどれも同じ。
違うのは、1の平均値の求め方と、3の乖離具合の計算の仕方だけで、後は全部同じ。超単純。
勿論、この時の私は各テクニカルツールの深い意味まで理解していたわけではありませんが、少なくとも当時の私にはそう思えてならなかったのです。
目先の価格は、短期的には大量の資金を持つ大手投資機関によるレート操作によって作られる。
それがリーマンショックでの大暴落を目の当たりにした私が下した結論でした。
そんなヘッジファンドなどの投資戦略を、単純な考え方から生まれたテクニカル指標で読み取ることができるのか?
実際に、2008年10月24日前後の日足チャートを見る限りRSIは50前後。
売買シグナルを発するどころかその気配さえ見せません。
移動平均線もストキャスティクスもMACDも同様です。
勿論、2008年10月24日のような日は、例外中の例外で、他の日の売買シグナルは、かなり信憑性がある、というのならまだ納得がいったのですが、どうもバックテストで調べれば調べるほど、一般に各インジゲーターの基本的な売買シグナルと言われているもの自体が、的中する確率は皆ほぼ5割くらい。
これなら、サイコロでも振ったほうがましなのでは?と言ってしまいたくなるような結果でした。
小難しい理論を振りかざしていても、結局はサイコロと同程度の物。
だったらテクニカル分析なんていらないのではないか?
そう思えて仕方なかったのです。
ファンダメンタルズもダメ。テクニカルもダメ。
なら、何を頼りにトレードを行えばよいのか?
完全に袋小路に入って迷い込んでしまった私ですが、とある本を読んで「なるほど」と納得することになります。
その本の名前は忘れましたが、テクニカル分析系の本ならどこにでも同じようなことが書かれていると思うので、あまり重要ではないでしょう。
チャート分析は2つの意味で重要
過去のチャートの形状から未来のチャートの形状を言い当てられるはずがない。
これはある意味真実だと思います。
でも、だからと言ってチャート分析に意味がない、というわけではないんですね。
私はそのことにようやく気づかされます。
落ち着いて取引するために必要なもの
チャート分析が重要である一つ目の理由は、そうすることで落ち着いてトレードができるから、です。
FXではメンタルコントロールが重要です。
どんな時でも落ち着いて冷静な判断を下せなければ、的確な判断は下せませんから当然ですね。
私はこの半年の自分の取引を振り返って、そのことを痛切に実感してました。
どこでエントリーしてどこで利食いあるいは損切りすれば良いのか。
それが全く、わからないままFXを始めてしまった私は、混乱のあまり、1,2pips抜き&損切りしないという、神頼みトレードで、最悪のコツコツドカンをやってしまいました。
しかし、もし、私がテクニカル指標が示す売買シグナルに従っていれば、上記のようなことはなかったでしょう。
いえ、勿論、テクニカルツール単体では、所詮は的中率は5割程度ですから、それで勝てるというわけではありませんし、結局はじり貧ではあったのかもしれません。
が、少なくとも今回のようなびっくりするような大負けはしなかったと思います(まあ、あれはあれで多くの教訓をもたらしてくれましたが)。
結局、優位性のある売買ルールを確立しないことには、安定して勝ち続けることはできませんし、メンタルコントロールの術はテクニカル分析だけではありません。
もっともっと勝つために重要なことはたくさんあるのですが、テクニカル分析に従って機械的にトレードをすることがメンタルコントロールの一助となることは間違いないのではないでしょうか。
皆が同じチャートを見ているという現実
チャート分析が重要である2つ目の理由は、皆が同じチャートを見てトレードしているから、です。
FXにしろ、株式取引にしろ、毎日のように(ファンダメンタルズ的な)材料があるわけではありません。
なら、何を毎日の売買の目安にするか、と言えば、テクニカルツール以外にありませんよね?
皆が同じチャートポイントを見て、皆が同じ売買シグナルに従って買いや売りをするから相場は動く。
ヘッジファンドなどの大口の投資機関も同様です。
彼らは他の投資家たちのストップロスを狩ることを狙っているわけですから、当然、多くの投資家が意識しているであろうチャートポイントを、彼らも同様に意識しています。多くの投資家が買いだと思っているポイントで、誘発を狙って大規模な買いを仕掛けたり、多くの投資家がストップを置いているポイントでストップ狩りを狙ったりしてきます。
勿論、仕掛けがいつもうまくいくわけではありませんが、サポレジラインやトレンドラインを含め、皆が見ているインジゲーターが発する売買シグナル、それに多くの投資家が従っている以上、皆の思いが一つになった時には大きなトレンドが生まれることになります。
そのトレンドに乗るためにはどうすれば良いか。
言うまでもなく、他の投資家たちが意識している(であろう)チャートポイントをこちらも意識して注視していれば良い、ということになります。
この辺りの考え方はFXではテクニカル分析が最重要である理由でも書きましたが、まさにそうなんですね。
FX上級者の損小利大の実現のやりかた
確かに一般的に言われているテクニカルツールの売買シグナルは、それ一つでは、大体5割程度しか的中しません。
しかし、よく考えてみれば、勝率5割でも損小利大なら利益はでるのがFXです。
負ける時は小さな波。勝つときは大きなトレンドに乗る。
チャートポイントを意識することで、皆と同じ方向を向く(正確には大手投資機関の仕掛けに乗る)ことで、損小利大トレードが可能になるのです。
逆に言うと、チャートポイントを意識しなければ、大きなトレンドを捕まえるのは難しいわけで、それは損小利大トレードの実現が難しいことを意味します。
損失を少なくすることは簡単です。損切り貧乏になればいいだけ。
でも利を大にすることは、大きなトレンドに乗ることでしかなしえません。
- FX初心者:損切り貧乏で損小利大を実現しようとするも上手くいかない
- FX上級者:トレンドに乗ることで損小利大を実現する
FX初心者がなかなか勝てない理由は、テクニカル分析を軽視しているから、と言い換えても良いかもしれません。
以上、2つの理由からテクニカル分析の重要性を理解するに至った私は、ますますテクニカルツールの研究に時間を費やすようになっていくのですが……。