第4話:FXで3ヶ月連続月10万円達成も疲れるだけの日々
第3話の続きです。
FXを始めて一週間であっという間に種銭の半分を溶かした私ですが、取引口座も移し替え、心機一転、再スタートを切ります。
新しい取引ツールHypeerSpeedはこれまでのものとは比べ物にならないくらい使いやすく、快適なトレード環境を手に入れた私は、クイック注文を使った秒スキャ短期回転売買で、これまでの損失を少しでも早く取り戻そうと躍起になります。
スキャルピング+損切りなし=最強?
マネパは約定力7年連続ナンバー1のうたい文句に違わず、狙ったレートで成行注文ができるばかりか、一切スリッページも約定拒否もありません。
そのため、非常に秒スキャがやりやすい!
ちなみに秒スキャとは、エントリーから決済まで数秒で終え、主に5pips以下での利食いを繰り返していく、短期回転売買のことです。
FXという低取引コストの金融商品だからこそできる売買手法であり、当時はドル円のスプレッド4銭の時代だったにも拘わらず、FXのスキャルピング・プレーヤーは非常に多かった印象があります(今現在は、ドル円のスプレッドは0,5銭以下と10分の1程度になっていることもあって、秒スキャは多くのFX業者で禁止されています)。
私はこの秒スキャを多用することで、4月とは打って変わって、5月以降は負け知らずの連勝街道を歩むことになります。
5月はほとんど取引していませんでしたが、6月7月8月の3ヵ月は、この秒スキャで月10万円以上、稼ぐことに成功します。
損切りしなければ負けるはずもなし
私の連戦連勝の理由は、単に損切りしなかったから。
それだけです(笑)。
初っ端の連戦連敗の要因は明らかに損切り貧乏にある、と考えた私は、今度は逆にできる限り損切りはしないという方向へ進みます。これを損切りできない病と呼び、損切り貧乏に陥った初心者が続けてはまりやすいFXの典型的な負けパターンなのですが、当然ながら、これが後に大悲劇を生むことになります(笑)。
とまあ、それは後述するとして、とにかく、今回は最初のように適当にエントリーしていたわけではなく、一応、自分なりの売買ルールを掲げて取引していました。
- ドル円の方向性(買いか売りか)を見極める
- その方向性に従って秒スキャをする
- 指標発表時はポジションを閉じる
- 損切りは10銭
まあ、売買ルールと言っても、掲げていたのはこの4点だけですが(笑)、実質的に4はほとんど守られることはありませんでした。
というのも、私はほとんどの取引が1,2pipsで利食いをしていました。
スプレッドは4銭、つまりエントリーした瞬間からマイナス4pipsの損失から始まりますから、5,6pipsほど上昇したところで利食いをしていたことになります。
「10銭で損切り、1,2銭で利食い」とは
- エントリーから5,6銭上昇で1,2銭の利益
- エントリーから6銭下落で10銭の損失
ということいなります。
リスクとリターンを見比べればわかるように、利益を出すためには、勝率9割くらい必要なわけですから、損切りなどしていたら、到底達成できるはずもありません。
だから、いつしかマイナス10銭で損切りという最初のルールは、徐々に私の意識から薄れていくことになります。
勿論、全く損切りしなければ、いつか想定外の大変動が生じた場合、大損することは当時の私にもわかっていました。
だから、損小利大トレードを実現するためには「利食い幅を広げる」「ロスカットルールを確立する」この2点が必要不可欠だとは思っていたのです。
ただ、損切りなし&秒スキャがあまりにもうまく行き過ぎたため、私は最初のマイナス50万をチャラにするまでは損切りなしで行こう、と考えるようになっていました。
私はこの時、最初の損失をできるだけ早く取り返したいがために、取引枚数を10枚にまで上げていました。
10万通貨での取引だと、たった1銭の利食いでも利益は1000円です。2銭抜きなら2000円の利益。5銭抜きなら5000円の利益です。
それも数秒の間にですよ?
1時間の間に数度取引するだけで、あっという間に1、2万円の利益です。
働くのが馬鹿らしくなるくらい簡単にお金が稼げることに、私は少し酔っていたのかもしれません。
勿論、相場が自分のエントリーとは逆の方向に動き、一時マイナス2,3万くらいまで損失が膨らむこともありましたが、確率にしてみれば、たったの1,2割程度。
含み損が出ている間は心中穏やかではいられませんが(笑)、しかし、そういった含み損も、大抵は長くとも1時間以内に元のレートに戻って、結局、損失0になるのが為替相場のいつものパターンです。
私はこの為替相場の特徴を経験上、つかみ始めていたのです。
為替は、相場観さえ間違っていなければ、損切りしなくても大丈夫。
前回、私は相場観の大切さに気づいた、と書きましたが、この時もまだそう思っていたんですね。
ファンダメンタルズ分析をしっかり行い、トレンドの方向性さえ間違わなければ、一時的に含み損が出ても、結局は元通り。
そんな風に思っていたのです。
勿論、この考え方自体は、決して間違ってはいないのかもしれません。
問題はどんなに相場観に優れた人でも間違いはある、ということであり、トレンドを読み切るなんて誰にもできないということでした。
そのことを当時の私も薄らとは気づいていたと思います。何事にも絶対はないと。
事実、私のこの3か月の連戦連勝は、ファンダメンタルズ分析をしっかり勉強した結果である、などどは決して思ってはいませんでした。
実際、6,7,8の3ヵ月で2度ほどですが、含み損が20万を超え、なかなかレートが元に戻らず、2,3日ただただ祈っていた時もあったのです。自分のやり方が間違っていることくらいは当時の私にもわかっていたと思います。
しかし、とにかく、早く損失をチャラにしたい、という思いや、そういった「なかなか含み損が解消されない」現象が為替相場ではほとんど起きないことから、運が良ければ今後も大丈夫!という思いもあり、そして何よりも、ほとんどの日で1時間に1,2万稼げてしまっていることから、その痛快さゆえに、トレードスタイルを改められなかった、というものあります。
FXで稼ぐのは決して楽ではない
もうこうなると、売買ルールはどこへやら、完全に神頼みのギャンブル状態です。
しかも、私はギャンブルは特に好きではないので、毎日PC画面と向き合うのは、決して楽しくはありませんでした。
結果、毎日のように時給1万円(1時間のトレードで1万円の利益)を得ているにも拘わらず、精神的な疲れだけが貯まっていくことになります。
FXで勝つのってこんなに疲れるんだな、でもやめれない、損失を取り戻すまでは絶対に。
この当時の私は、ただただ、損失を取り戻したい一心だけでFXを続けていたようなものでした。
そうこうしているうちに9月を迎え、私はこの取引スタイルをなかなかやめることができないまま、あともうちょっとで最初のマイナス50万がチャラになる直前まで来ながら、ついについに恐れていたことが起きてしまいます(泣)。